人間社会科学専攻 グローバル共生社会分野
経済や情報のグローバル化が進行し、ヒト、モノ、カネが国境をこえる一方、この事態に対応して人権や環境をまもる制度やシステムの構築は遅れ、人々は、国家、民族、階級、ジェンダーなどの分岐線上で多くの困難に直面しています。そうした幾重にも連なるディバイド(分断)を超克するために、一人一人の「生」を見つめ、持続可能で、かつグローバルな視点に立った、新しい共生社会の構想が求められています。「グローバル共生社会」分野では、国際関係論、経済学、社会学という3つの学問領域で蓄積された方法論、個別具体的な問題へのアプローチ(政策論)、そして、すべての領域を横断する重大な課題としてのジェンダーの視点を融合させた学際的研究を通じて、新たな共生社会を構想し実践する力を培うことを目的としています。
本分野では、さまざまなライフステージにおいて、また地域・草の根から国際まであらゆる場を越境して、多文化共生、環境保全、地域開発、平和構築、男女共同参画など、社会が抱える課題を的確に分析し、研究や実務を通じてそれらの課題に積極的に取り組む人材を養成します。
教育課程の特色
本分野は、「グローバル社会」「地域共生・平和共生」「共生経済」「共生社会」「グローバルジェンダー」の5領域から構成されています。「グローバル社会」は、グローバル共生社会の構造と動態を国際関係論の見地から研究します。「地域共生・平和共生」は、世界諸地域の共生について、地域研究・平和学の見地から研究し、「共生経済」は経済学の考え方を用いて、持続可能でインクルーシブな経済のあり方を研究し、「共生社会」は社会学的な考え方を用いて共生社会のあり方を研究します。「グローバルジェンダー」は領域横断的にジェンダー平等実現の方法をさぐります。
基礎科目
「研究能力の育成に関わる教育」として、「グローバル共生社会論」と「グローバルジェンダー分析」を置いています。これは、多様なアプローチを示すことによって、学生の視野を広げ、学際的な方法論の修得を目指しています。また「基礎科目」は、国際関係論、経済学、社会学の基本的な理論や方法論を学ぶための科目であり、多様なバックグラウンド、多様な年齢層の人々を本分野での研究に導入するための科目でもあります。「調査の技法に関わる教育」としては、「専門社会調査士」の取得のための「共生経済基礎研究(社会統計学)」「共生社会基礎研究(質的調査法、多変量解析)」 を置いています。
専門科目
領域別共生研究
国内外における社会共生の構想とその実現に関する具体的課題を研究します。地域共生研究では、アメリカの役割や東アジアに焦点をあてた地域共生を、平和共生研究では多文化共生や教育を重視した平和研究を、また、共生社会研究では、家族、地域、企業、労働、福祉をめぐる社会問題を、共生経済研究では、交通・輸送、水の供給や環境・開発問題などを中心に公共政策の研究を行ないます。
グローバルジェンダー研究
家事、育児、介護といった人間の「生」に不可欠なケアの側面やジェンダーが生み出す差別、格差、暴力などの問題の分析から共生の条件を探るため、仕事と家族、社会福祉、コミュニケーション、開発と平和構築などの諸側面からジェンダー研究を進めるとともに、比較研究の視点を活かした科目も置いています。
共生社会拠点実習
共生社会の実現に取り組む内外の組織(国際機関、行政組織、公共機関、研究所、NGO/NPO、企業等)においてインターンとして実務を経験する学生を事前・事後の学習及びインターン中のカウンセリングで支援します。
カリキュラム
・教育課程(授業科目及び単位数、必修・選択必修・選択の別等)
専任教員
グローバル社会領域
地域共生・平和共生領域
共生経済領域
共生社会領域
グローバルジェンダー領域
グローバル共生社会分野 修士論文タイトル
2019年度
- ・就労継続支援B型事業所における知的・精神障害者支援―支援事業所マルベリーの挑戦にみる課題と実践―
- ・中国における日本アイドル・ファン―「嵐飯」と呼び合う人々から―
2018年度
- ・イスラエル占領下のパレスチナ女性運動
2017年度
- ・海と暮らすコミュニティ-太地町の持続と変容-
- ・青海省海南州共和県黒馬河のライについて
- ・日中外交関係の変遷と今後の課題-1949年から現在まで-
- ・グローバル化と移住-「新一世」へのインタビューからの考察-
2016年度
- ・今日における軍縮・不拡散教育の意義
- ・月経のある身体と職場 ―仕事と対等な身体を目指して―
2015年度
- ・ブライアン・ターナーにおける身体の社会学
―「傷つきやすさ」の理論の再構築のために― - ・平和創造におけるシティズンシップ教育の意義
- ・ハンナ・アーレントの政治思想―全体主義と暴力に関するアーレントの考察から―
- ・インド・ウッタラーカンド州における女性と環境運動
―チプコ運動とナヴダーニャの活動に見るフェミニズム実践に関する一考察―
2014年度
- ・ネットワーク産業における自由化政策-電力システム改革後の政府規制のあり方-
- ・交通混雑に関する経済学的一考察
-空港混雑緩和に向けた使用料金制度とスロットオークション制度の比較を中心として-
- ・上原專祿の世界史教育論
-「庶民大衆」という思想背景- - ・Frederick Douglassと2つの結婚
―白人女性、Helen Pittsとの異人種間結婚をめぐる考察―
「共生社会拠点実習」これまでの実習先
- インド:Self Employed Women's Association(女性自営者協会)及びNational Institute of Public Cooperation and Child Development(国立公共協力・児童発達機構/ 女性開発省)
- [実習課題:途上国における幼児のための保育と教育の統合プログラム](2012)
- タンザニア: Kilimanjaro Native Co-operative Union(キリマンジャロ住民協同組合連合会)
- [実習課題:タンザニア・コーヒー産業の発展とフェアトレード](2012)
- インド: Navdanya(環境活動家ヴァンダナ・シバ氏が設立した環境・農業団体)
- [実習課題:生物多様性の保全とフェミニズム](2014)
- 日本: 日本国際ボランティアセンター東京事務所
- [実習課題:パレスチナ自治区における支援事業のマネージメント](2016)
修了後の進路
国際機関、NPO/NGO、公務員、民間企業、教員、研究職、ジャーナリストなど