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「学長室から」No.26(2020年7月25日)

「employability」そして「未来につなぐリベラル・アーツ」


 5月5日、4週遅れで始まった今年度の前期の授業も、あと1週余を残すだけとなりました。この間、すべての授業を遠隔授業で実施してきました。それも、教職員の方々の努力はもちろんですが、初めてのことに戸惑いと困難を覚えながらも対応してくれた学生のみなさんの理解と協力があってのことです。一人ですべてに対応することは心細くもあったことでしょう。「自立」を掲げる"東女力"を改めて誇りに思っております。

 先般、お二人の卒業生と本学のリベラル・アーツ教育について話す機会がありました。お二人は、「学生時代はその学びの意義をあまり意識はしなかったが、社会に出て、多くの引き出しを持つことや変化に対応する力をつけていたことがわかった」と話しておられました。それは、リベラル・アーツ教育は若者の知の体幹を強くしその後のあらゆるタイプの運動に対応する基礎筋力訓練である、という私流の理解を裏付けてくれるお話でした。

 最近、たまたま手にした吉田文氏の論文「リベラル・アーツの復権?:イギリスのケース」(IDE622号、2020年7月号)に `employability´という言葉を目にしました。吉田氏は、「日本語にすれば雇用可能性となろうが、`employability´とは、労働市場において雇用機会を得るだけでなく、流動化する中でも対応できる資質・能力を持つことを意味する」と述べ、続けて、「学生の`employability´の涵養こそが高等教育に求められる役割であり、それを達成するための幅広い教育が不可欠という共通認識が成立している」という調査結果を紹介しております(p.35)。私は、`employability´の持つ深い意味に新鮮な印象を受けました。

 わが国でも「リベラル・アーツの復権」の動きがあります。産業界と大学の委員で構成された(一社)日本経済団体連合会の「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」の中間報告書(2019年4月22日)では、「共有された認識」という大見出しのもと、求められる人材が備えるべき力として「理論的思考力と規範的判断力」が掲げられています。そしてそれを「リベラルアーツ教育を通じて涵養」としています。ここで言う「理論的思考力と規範的判断力」と「リベラルアーツ教育」が、吉田論文で言う`employability´と「幅広い教育」にそれぞれ対応すると考えると、吉田氏の論点と中間報告書の認識は見事に重なります。これまで「即戦力」と言っていた経済界からの発出だけに「復権」を感じました。

 本学では、創立以来100年余にわたって一貫して、リベラル・アーツ教育を大切にしてきました。昨年度から、「未来につなぐリベラル・アーツ」というタグラインを掲げていますが、「未来につなぐ」とは、吉田論文の「流動化する中」としての未来、そして中間報告書の「Society5.0」と言われる未来につながるということです。二人の卒業生がご自分の生き方をshow-upして、「変化に対応する力をつけることができた」と自信をもって語ったことは、本学のリベラル・アーツ教育がお二人にとって未来につながったということです。みなさんは、今、異常な中でその学びをしています。その学びに誇りと自信を持っていいと思います。

後期の授業については、「遠隔授業を主とし一部対面授業」という方針で臨むこととしました。新型コロナウイルスに対しては、引き続き「感染しない、感染源とならない」方針を堅持する中で、実験・実習科目を中心に対面授業を一部持つことにしました。対面授業の受講が困難な方には遠隔授業でも受講できるように配慮します。対面授業に関する詳細は、前期授業終了日(8月5日)までに、お知らせすることになっております。

ところで、先般、「TWCU SSプロジェクト」がスタートしました。これは、学生のみなさんのアルバイトの機会が少なくなる中、大学業務を補助する「学内アルバイト」の機会を提供し、「誰かのためにできること」を実践し、困難を自らの力で乗り越えようとする学生を支援するプロジェクトです。遠隔でも可能です。ご関心のある方は、本学公式サイトをご覧ください。