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TONJO QUESTION013

いろいろな人と活動するとき、円滑に進めるコツはありますか。

心理学科

#問いに対する対談コラム

概要

人が集まると揉め事が起こったり、物事がスムーズに進まなくなったりした経験はありませんか。今回は、いろいろな領域のある心理学の中から、他者や社会環境が個人の思考、感情、行動に与える影響を科学的に研究する「社会心理学」の観点から人が集まった時の「心理」にフォーカスして考えてみましょう。

出演者

※1 2025年度以降は心理学科に学びが引き継がれました

いろいろな人と活動するとき、円滑に進めるコツはありますか。

この問いについてまず何を思いましたか。

山本

大学の授業で、感謝が人間関係によい影響を与えるということを研究の結果とともによく聞くことがあります。私は今、カフェを併設したお茶の専門店でアルバイトをしていますが、ときどき一方が忙しくなることがあります。そんなとき誰かがヘルプに来てくれると、すぐに「ありがとう」と言うなど、意識して感謝を伝えるようにしています。

細谷

感謝に通ずることですが、ちょっとした気遣いも大事だと思います。ゼミでグループ研究を行っていると、どうしても特定の人に負担が集中してしまうことがあります。そこで全部お任せにするのではなく、自分に何ができるかを考え、「これは私がやるね」など言葉にすることでチームに一体感が生まれる気がします。

正木

そもそもの前提として、人が集まると物事がスムーズに進まないものだと、理解しておくこともコツの一つではないでしょうか。社会心理学では、個人が社会の中でどのように相互作用し、機能するかに焦点を当て、いわゆる集団心理や対人関係などの日常生活で起きる心理や行動の法則を学びます。実際の人や社会を扱うので、大学の外での経験とつなげて考えることや、応用することも大事になります。二人の経験はまさにその良い例で、すばらしいと思いました。

言葉の掛け方で苦労することや困ることはありますか?

山本

やってほしいのは別のことなのに、うまく伝わらないことがあります。そこでバシッと言うと相手も嫌な気持ちになるので、「ありがとう。次はこれをお願い」という感じで、相手を認めつつ、やってほしいことを伝えるようにしています。

正木

「なぜ思った通りにいかないんだろう」と思うのは自然な反応です。学年や世代や出身地など、属性や背景が違うと常識も違います。そういう人たちが一緒にやっていくためには、自分の常識と相手の常識は違うかもしれないと認識すること。イラっとするかもしれないけれど、問題の原因はそこのズレにあるのかもしれません。 また、たとえ正しいことを伝えるにしても、あなたに言われたくないということもあります。これはそもそもベースの信頼関係ができていないからです。そう考えると、普段から感謝を伝え、きちんと「私はあなたのことを見ているし、仲間だと思っている」と伝え合って土台を作った上でダメ出しするのが重要です。

山本

いろいろな人が集まれば、常識が違うから問題が起きる。これを知っていれば「そういう人もいるんだ」と素直に受け止められます。

細谷

私が社会心理学に興味を持ったのは、日常にすごくフィットしていたからですが、「こういう場面ではこのような心理が働いているんだ」というように、日常が学問にすぐ結びつくところはおもしろいと感じます。

この問いが関心を持たれる背景とは?

正木

一つには、会社でも学校でも部活でも、いろいろな人と協力しなければいけない場面はあり、誰にとっても身近なことだからだと思います。 二つ目として、すぐにイメージできるような「チームとはこうあるべき」という解決策があまりうまくいかないということがあります。たとえば、命令やルールで縛ってチームや組織を動かしていこうとしてもうまく回らない。どこかで誰かが不幸になって、ある日、爆発してしまうか、そもそもうまくまとまらない。それよりも人がどういうときに何を考え、どう行動するのか、しっかりと理論も学びつつ、それを応用して理由を突きとめたうえで対処する方がうまくいきます。

山本

私たちは卒業論文で「サーバントリーダーシップ」というリーダーシップについて研究しています。誰かがカリスマ的に引っ張っていく上意下達型より、メンバーの成長を支えつつボトムアップで物事を進めるサーバントリーダーシップの方がメンバー自身も貢献しようという雰囲気になり、チームで一体となってやっていこうという思いが強まると感じます。

細谷

リーダーシップにも全員がリーダーシップを持つシェアドリーダーシップなど、いろいろな種類・方法があります。そういうことを知ると、リーダーであるかどうかに関係なく、誰でもリーダーシップを発揮していいのだと気づき、今後、いろいろな場面で応用できると思います。

そもそも「円滑に」とは何を意味し、そのためのコツはあるのでしょうか。

正木

チームで活動するからには何かチームの存在意義や目的があるはずです。その目的に向けてうまく折り合いをつけながら、目的を達成できる範囲で一緒に進んでいくのが「円滑」に進めるということだと思います。個人を重視しすぎて「みんなが違っていていい。好きにしよう」だと滞ることもあります。一方で、指示や命令だけでは個々人のモチベーションにつながりにくいです。そうならないよう、人もチームも重視しつつ、うまくバランスを取って進めていくにはいろいろな理論やコツを学びつつ、それを応用・微修正する必要があります。
二人が注目しているリーダーシップの在り方に注目する考え方もあれば、縦より横の関係に注目してメンバー同士がどういうコミュニケーションを取ったらいいかに注目する考え方もあります。共通して大事だと思うことを強いて挙げるとすれば、「自分の常識と相手の常識は違うから、いいことも悪いこともはっきり伝えましょう」です。
違う人同士が一緒に活動しようとすると、すれ違いやズレが起きやすく、それがときには揉め事につながります。社会心理学で学ぶ対人的なバイアスと呼ばれるものは、こうしたズレの一つです。曖昧さが残るコミュニケーションをすると、どのようなズレやすれ違いが起きがちかを学び、そのうえで自分と相手が違う人間だということを理解して、分かりあおうと努力をすることが大事でしょう。
そうしたことを理解したうえで、具体的にどんな手段で解決を目指すかは、人によって異なってよいと思います。研究ではさまざまなことが検証、提案されており、その中の一部が、今日二人が挙げてくれた「感謝」「サーバントリーダーシップ」です。どのような解決策がピンとくるかは、向き合っている人・チームの特徴や、本人の向き・不向きによっても異なります。まずは心理学や社会心理学を学ぶことで、「そもそも人や集団はどのような心と行動の仕組みがあるか」を知り、それを日々の生活に応用する中で、自分たちにとってベストな「コツ」を見つけることが、大学での学びの醍醐味ではないでしょうか。