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東京女子大学

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[レポート]

「わが国の財政について~不都合な真実を正視し、打開する~」-矢野康治先生講演会レポート

Tue.

東京女子大学では2024年12月2日に元財務省事務次官の矢野康治先生(神奈川大学特別招聘教授)を講師としてお招きして、学会経済学部会主催の掲題講演会を開催しました。日本の財政運営を実際に取り仕切ってこられた矢野先生から、財政の現状と課題、そして今後の展望について直接ご教示いただく機会を得たことは本学学生にとって貴重な学びの機会となりました。
講演では、先ず、日本の財政構造について教えていただきました。歳出が一貫して伸び続ける一方で税収が伸び悩み、その差が「ワニの口」のように開き、借金である公債の発行で穴埋めされています。その結果として、債務の残高は対GDP比で見た場合に世界189カ国中第2位の大きな規模であり、世界で最悪の水準とも言える状況になっています。
次に、財政の悪化の背景として、高齢化の進展に伴う社会保障関連の歳出拡大の影響が大きいことを解説いただきました。日本では高齢化率、すなわち、総人口に占める65歳以上の人口の割合が29.4%(2024年)に達し、先進国で最も高齢化が進んでいます。諸外国と比べて、受益(給付)と負担のバランスが取れておらず、「中福祉低負担」の状態であり、社会保障制度の持続可能性を確保するための改革が急務となっています。
最後に、矢野先生は財政健全化に向けた努力の重要性をあらためて強調するとともに、処方箋のとなる私案もご共有いただきました。先生は平均寿命・健康寿命の延伸とともに高齢者の定義を見直して就労年齢を引き上げていくことを提案され、そうすることが高齢者個人、雇用主、そして社会全体にとっても有効であると説明されました。
講演会に参加した学生からは、「将来を担う世代として財政問題を他人事としてではなく、当事者意識を持って正しく理解することができた」、「政策運営の責任者から直接話をうかがうことができ、非常に勉強になり、また刺激にもなった」といった声が相次ぎ、非常に有意義な講演会となりました。

講師プロフィール

  • 矢野康治 先生

    1985年に一橋大学 経済学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。小樽税務署長、ハーバード大学 国際問題研究所 客員研究員、主計局 調査課長、内閣官房長官 秘書官、主税局長、主計局長などを経て、2021年に財務事務次官。2022年に退官後、現在は神奈川大学特別招聘教授、日本生命特別顧問としても多方面で活躍中。著書に「決断!待ったなしの日本財政危機」東信堂(2005年6月)などあり。