学長告辞
皆さんが大学生活を送ったこの4年間は、戦後80年の歴史の中で、とりわけ戦争の多い4年間となりました。小さな紛争はそれまでもありましたが、世界秩序を大きく揺れ動かすような国と国との戦争が始まったのは、まさに皆さんが入学した4年前のことです。今日のこの学位授与式には、今もそういう戦争が続くウクライナからの学生も列席しています。人々は、高度に発達した民主主義の国が、戦争などという愚かな選択をするはずはない、と信じていたのです。今となっては、そのような楽観こそ愚かだった、と言わなければなりません。
国際情勢に押されて、国内でも大学教育への視線が厳しくなりました。日本は他の先進国と比べて、労働生産性において大きく遅れを取っている。先端技術の開発もなく、国際競争力も落ちている。そしてその原因は、大学教育だ。特に、理系の学生が少ないことが問題だ。そういう政府の掛け声で、今日本の大学は、大きく様変わりしようとしています。
歴史をふり返れば分かるように、それは、日本が繰り返したどってきた道です。明治時代には、文明開化と富国強兵です。第二次世界大戦の時には、有用な理系学生を残すために、文系の学生から徴兵されて戦地へ送られてゆきました。東京女子大学は1918 年に開学しましたが、戦争中はキリスト教の大学として、また戦争の遂行に不要な女子の教育をする大学として、軍部の批判を受けます。「専門学校なのに大学であるかのごとき名称を看板にしているのはけしからん」と言われ、やむなく「東京女子専門学校」という名前になりました。
国際情勢に押されて、国内でも大学教育への視線が厳しくなりました。日本は他の先進国と比べて、労働生産性において大きく遅れを取っている。先端技術の開発もなく、国際競争力も落ちている。そしてその原因は、大学教育だ。特に、理系の学生が少ないことが問題だ。そういう政府の掛け声で、今日本の大学は、大きく様変わりしようとしています。
歴史をふり返れば分かるように、それは、日本が繰り返したどってきた道です。明治時代には、文明開化と富国強兵です。第二次世界大戦の時には、有用な理系学生を残すために、文系の学生から徴兵されて戦地へ送られてゆきました。東京女子大学は1918 年に開学しましたが、戦争中はキリスト教の大学として、また戦争の遂行に不要な女子の教育をする大学として、軍部の批判を受けます。「専門学校なのに大学であるかのごとき名称を看板にしているのはけしからん」と言われ、やむなく「東京女子専門学校」という名前になりました。
だからこそ本学は、戦後に新制大学として再出発した際にも、国家の要請に従うだけではない、独自の教育目標を掲げたのです。時代がどのようになろうとも、人間として、変わりない真実を求め続ける姿勢を持ち、独立した知性と人格を持つ女性となってほしい。それが、皆さんが卒業する、この東京女子大学の教育です。
本学が一貫して掲げるリベラルアーツ教育も、戦争の反省から生まれたものです。19世紀にドイツで研究大学が興隆すると、その成果に目を見張った各国は、競って科学の振興策を定め、専門教育を推し進めるようになります。その結果が二つの世界大戦でありました。リベラルアーツは、行き過ぎた科学偏重を是正し、人間や文明について批判的な考察を行い、良識ある市民として政治に参加する感性を養う教育です。それが、「知識より見識、学問より人格、人材より人物」と語った初代学長、新渡戸稲造の建学の精神でありました。
本学が一貫して掲げるリベラルアーツ教育も、戦争の反省から生まれたものです。19世紀にドイツで研究大学が興隆すると、その成果に目を見張った各国は、競って科学の振興策を定め、専門教育を推し進めるようになります。その結果が二つの世界大戦でありました。リベラルアーツは、行き過ぎた科学偏重を是正し、人間や文明について批判的な考察を行い、良識ある市民として政治に参加する感性を養う教育です。それが、「知識より見識、学問より人格、人材より人物」と語った初代学長、新渡戸稲造の建学の精神でありました。
先行きの不透明な時代に、足元をすくわれずに生きてゆくためには、どこかにしっかりとした人間の軸を持つことが必要です。「すべて真実なこと、すべて正しいこと、すべて愛すべきこと。」そんな聖書の美辞麗句は、この時代にはいかにも頼りなく感じられるかもしれません。それでも、覚えておいていただきたい。人間として、女性として、いつか自分が試される大きな機会に、この言葉があなたを生かす力を与えてくれます。
本当に真実で美しいことは、この世の歴史の中では完成しません。だからわたしたちは、信仰によって救われるのです。本当に価値のあることは、人間の一生の間には実現できません。だからわたしたちは、希望によって救われるのです。本当に徳の高いことは、一人だけで成し遂げることはできません。だからわたしたちは、愛によって救われるのです。信仰と、希望と、愛。そして、使徒パウロが言うように、そのうちもっとも大いなるものは、愛です。
どうか、平和の神が、あなたがたと共にいますように。神の愛と恵みと慈しみが、卒業生一人ひとりの上に、豊かに注がれますように。卒業、おめでとう。
本当に真実で美しいことは、この世の歴史の中では完成しません。だからわたしたちは、信仰によって救われるのです。本当に価値のあることは、人間の一生の間には実現できません。だからわたしたちは、希望によって救われるのです。本当に徳の高いことは、一人だけで成し遂げることはできません。だからわたしたちは、愛によって救われるのです。信仰と、希望と、愛。そして、使徒パウロが言うように、そのうちもっとも大いなるものは、愛です。
どうか、平和の神が、あなたがたと共にいますように。神の愛と恵みと慈しみが、卒業生一人ひとりの上に、豊かに注がれますように。卒業、おめでとう。