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2022年度入学式を挙行しました

Tue.

4月5日(火)・6日(水)の2日間、東京女子大学講堂にて、2022年度入学式を執り行いました。

感染防止対策を徹底した上で、学科・専攻を分け、時間を短縮して、約50分間の礼拝形式にて実施しました。学生の安全を第一に考え、大変残念ながら、ご家族の方の式へのご参加と学内への入構をご遠慮いただくこととしましたが、式の当日はLIVE配信を行い、多くの方にご視聴いただきました。
式では一人ひとりの名前を呼び、起立してもらいました。これは学生と教師がお互い一人ひとりの人格を尊重するという東京女子大学の基本的な考えによるものです。呼名の後、森本学長より式辞が述べられました。

  • 学内に2か所の写真撮影用パネルを設置

  • 入学式に向かう新入生

式辞

今日ご参列のみなさんの心には、どんな思いが行き交っているでしょうか。新しい生活への期待と不安。学業への熱意。そして多くの見知らぬ人々との出会い。この大学の美しいキャンパスや学生生活に憧れて、入学してきた学生もあれば、自分が思い描いていたのとは違う選択を迫られて、この場に座っている学生もあることと思います。

実は、今こうしてお話している私自身も、みなさんと同じく、この東京女子大学にやってきたばかりの新人です。わたしの胸の内にも、多くの期待と不安が入り交じって溢れています。はたして、自分はこの場にふさわしいのだろうか。自分が下した決断は正しかったのだろうか。ですから、ここに集まっているみなさんの気持ちも、私にはよくわかります。

東京女子大学は、今から104年前、大正7年に創立されました。今私たちは、コロナ感染とウクライナ戦争という、二つの重い世界史的な出来事の中にありますが、実は当時もまさに同じ状況でありました。ヨーロッパでは、第一次世界大戦がまだ続いており、そこへスペイン風邪の大流行が始まって、多くの人が命を失った時代です。

そのような不安な世相にあって、本学は、それ以前の大学とはまったく違う教育理念を掲げて出発をいたしました。当時の社会常識にとって、女性は男性の陰でお手伝いをする存在にすぎませんでした。しかし、本学が目指したのは、高い教養を備え、自分の知性で判断し、自覚と責任をもって行動する、自立した女性の育成です。そうでなければ、新しい時代を切り拓いて輝く力をもつことはできない、と考えられたからです。

その挑戦は、100年あまりを過ぎた今でも続いています。東京女子大学の学生になるということは、その挑戦をみずからに引き受ける覚悟をする、ということです。単に周りの人々の言いなりになるのではなく、政府や上に立つ人々の言葉を鵜呑みにするのでもなく、世の男性たちにかしずいて機嫌を取るのでもない。女性としてだけでなく、人間としての魅力にあふれ、知性と行動力を備えた人になってもらいたい。みなさんの学長として、そのように願っています。

先ほどお読みいただいた聖書の言葉は、東京女子大学が創立の初めから大事にしてきた言葉です。「すべて真実なこと」という一言は、ラテン語で大学本館の正面に大きく掲げられています。正門から入ってすぐに目につくところですので、みなさんもお気づきになったでしょう。

本館に刻まれたQUAECUNQUE SUNT VERA(すべて真実なこと)の文字

2000年前に、フィリピの教会に向かってこの言葉を書いたパウロは、何を考えていたのでしょうか。「すべて真実なこと、すべて尊ぶべきこと、すべて正しいこと」それらをみな心に留めなさい。ということはつまり、それがどこから来たものであるにせよ、ということです。

当時のギリシア世界には、優れた思想や宗教がたくさんありました。生まれたばかりのキリスト教は、それらを全部否定して、「自分の考えだけを受け入れなさい」と教えたのではありません。ここに記されているのは、当時盛んだったストア哲学の徳目表です。パウロは、由来がどんなものであれ、真実なことならすべて心にとめなさい、と言ったのです。たとえそれが、キリスト教とは関係のないものであっても、ということです。

今日でも同じです。「すべて真実なこと」は、由来の如何を問わず、大切にしなさい。今風の言葉で言えば、「ブランドで考えるな」ということです。どの会社が作ったものでも、いいものはいい。悪いものは悪い。そういう判断を、自分の力ですることができるようになれ、ということです。

みなさん、これは化粧品やバッグの話ではありません。大学というブランドも同じです。どこの大学だからよい、悪い、ということはありません。すべて、真実なことを、心に留めなさい。

そのためには、判断の基準を、自分のうちに持たなければなりません。人の意見を聞く、世の中の評判を聞く、ということも大切ですが、最後は自分で決着をつけなければならない。そして、自分が決めたことには、自分で責任を取る。それが、成熟した人間のあり方です。

コロナ感染で、私たちの日常は大きく変わりました。従来の常識が通用しない時代です。現代の文明社会には起こらない、と言われていた戦争も、現実の出来事となってしまいました。民主主義や法の支配という、社会のごく基本的な約束事すら、危機に瀕しています。このような時代には、目先の知識や技術の習得だけでなく、ものごとの基本へ立ち帰って考える力が必要です。創立以来、本学が大切にしてきたリベラルアーツの学びは、まさにそのような能力を養う学びです。

今日から始まる東京女子大学での学びが、みなさんにそのような力を備え、自信と魅力に溢れた女性へと成長する助けとなりますように、心から願い、お祝いの言葉といたします。


東京女子大学 学長
森本あんり