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東京女子大学

ゼミの小窓 Vol.7

東京女子大学では多数の教員がさまざまな分野の研究活動を行っています。
各教員が語る「ゼミの小窓」を通して、研究内容の例をご紹介します。
※本記事は東京女子大学広報誌『VERA』連載の教員コラム「ゼミの小窓」を再構成したものです。

第18回 /過去と「直に」対話する-外国史研究のゼミから-人文学科歴史文化専攻 坂下ゼミ

歴史とは過去に起こったこと。でも起こっただけでは歴史になりきりません。誰かがその事柄について、語ったり、叙述したりして記録(史料)を残すことで、はじめて後世の人びとは過去の一部を「歴史」として認識できるようになります。

歴史学では、過去の事柄について調べて分析し、その結果を書くわけですが、これを(史料批判などの)学術的なルールに沿って客観的に行う点に特徴があります。細かく言うといろいろあるのですが、史料に基づいた過去の事実の認識が核という部分は動かないでしょう。史料が言っていないことについて、歴史学が何か言うことはめったにありません。あえて言う場合は、それが史料に基づかないことを言明します。それだけ史料を大事にするのです。

二次情報の「フィルター」を越えて

これはどの地域を研究しても同じですが、学部ゼミでの外国史研究には難しさがあります。史料へのアクセスの難しさに加え、言語の問題もあって、ゼミの場で史料研究を全面的に展開するのは容易ではありません。そのため、どうしても現代の研究書や論文を通じて、つまり当時の人々の「生の声」を直接聴くのではなく、後世の誰かの解釈、つまりフィルター越しに過去を見ることになりがちです。

そこで3年生対象のゼミでは、あえて史料を読む機会をつくっています。活字化された史料集が中心ですが、それでも外国語の史料を自ら読んでいくことを参加者に体験してもらっています。たとえば、産業革命前夜のイギリスを歩いたドイツ人作家の旅日記。若いフランス人貴族によるロンドン見聞録。あるいは、フランス革命に巻き込まれてしまったイギリス人一行の手紙。今年のゼミでは、ヨーロッパ大陸を旅したイギリスの女性貴族が、道中で妹に送った手紙を読んでいます。

史料と学生たち

外国史研究において日本史と同量の史料に触れることは難しいかもしれません。それでも、一次史料に直接触れて、そこから史実に迫る難しさと楽しさを体感する機会を必ず持ってもらうようにしています。史料を読んだときの学生たちの反応は、研究書(二次文献)を読んだときのそれとは、明らかに異なっています。

このような試みの中には、フェイクニュースが話題になりがちないまを考えるためにも、なにがしかの意味を持つことがあるかもしれない。そんなことも少し念頭において、外国史の史料読解をゼミで続けている次第です。

小コラム

近世イギリスの上流階級の間では、ヨーロッパ周遊が流はや行った。語学を学び、質の高い芸術に触れ、洗練したマナーを身に付けるための青年貴族の旅行で、グランドツアーと呼ばれた。だが、時には成年の女性も旅した。ゼミで手紙を読んでいるホランド女男爵もそんな女性の一人。

  • Caroline Fox, 1st Baroness Holland (1723-1774) by Allan Ramsay

  • 坂下 史

    人文学科 歴史文化専攻 教授
    1999年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。愛知県立大学 外国語学部 専任講師、オックスフォード大学 客員研究員などを経て現職。