申込不要受付中締切間近終了
東京女子大学

ゼミの小窓 Vol.6

東京女子大学では多数の教員がさまざまな分野の研究活動を行っています。
各教員が語る「ゼミの小窓」を通して、研究内容の例をご紹介します。
※本記事は東京女子大学広報誌『VERA』連載の教員コラム「ゼミの小窓」を再構成したものです。

第15回 /家族という現場から-心理学科 花田ゼミ

臨床心理学が専門です。臨床から研究のアイデアを得て、研究で臨床のクオリティを高め、アップグレードされた臨床から新たな研究のデザインがいっそう与えられ、さらに研究で臨床のバージョンアップをもっと目指していく。臨床的関心と研究的動機がおのずと結びつく相互作用に根ざしながら、特に、家族心理学や家族療法の立場から臨床と研究を行い、公認心理師や臨床心理士といった心理の専門職のたまごたちを育てています。

臨床では、さまざまな困りごとを抱えたいろいろな家族に出会います。事情はそれぞれですが、どの家族にも共通するのは、今は泣いているけれど、また一緒に笑いたいと思っているということ。家族に泣き、家族に笑う。私たちの日常にも少なからずそのような家族体験があるでしょう。ゼミでは、学生がこれまで経験的に抱いてきた関心や動機からテーマを設定し、研究を通じて家族と出会い直すことにより、日常ひいては臨床の実践を更新しています。

家族理解や家族支援において欠かせないのが、家族を部分の総和以上のシステムにつなぎまとめているコミュニケーションという視座です。治療プロセス一般を検証するため、日本語臨床心理面接コーパスおよび多言語臨床心理面接コーパスを構築し、治療言語の効果的な運用の実際を明らかにしています。症例検討として、『死の棘』等の作品で知られる島尾敏雄とその妻や子どもたちの会話資料を分析し、家族葛藤の機構と過程を確かめています。

近年、世界では若い世代、特に女性のメンタルヘルスの深刻な悪化という危機が続いています。世界も家族同様コミュニケーションでつながるシステムとみて、若年女性の視点からメンタルヘルスの促進を実現する学習プラットフォームプロジェクトをソーシャルメディアですすめています(下図)。プロジェクトには、本学学生をはじめ海外学生他も参加し、臨床心理学のみならず社会学や医学等の専門家と共に、絶望ではなく希望の拡散に取り組んでいます。

  • 問題の原因追求よりも解決構築。問題は必ず起こるが、解決もきっと起きている。問題を誰かや何かのせいにするのはいったんやめて、うまくいった、なんとかなった、気にならなくなった、そんなエピソードを集め、伝え、広めています。

入門コンテンツ

Bateson, G.(2000).Steps to an Ecology of Mind:Collected Essays in Anthropology, Psychiatry, Evolution, and Epistemology(University Of Chicago Press.)

Batesonらが家族心理学や家族療法にもたらしたシステムやコミュニケーションというものの見方や考え方は、領域を超えたライフハックでもあります。

  • 花田 里欧子

    心理学科 教授
    東京女子大学文理学部心理学科卒業、東北大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。公認心理師、臨床心理士。日本学術振興会特別研究員(DC2)、京都教育大学准教授等を経て現職。

第16回 /生物と物理の間で-情報数理科学専攻 高須ゼミ

「えっ、生物と物理は関係あるのですか?」と学生に聞かれることがあります。確かに高校では、生物と物理は異なる教科なので、関係ないと思っている人もいるかもしれません。

私の研究遍歴

私は物理学科を卒業し、大学院では磁性体のモデル計算をしていました。金沢大学に就職してから、高分子のシミュレーションをするようになりました。1990年から2年間、アメリカのカルフォルニア大学バークレー校の化学科でポスドク研究員をしました。そこでの研究テーマは光合成の電子伝達のモデル計算でした。友人が生物系の研究室で研究員をしていたので、話を聞く機会があり、「これからは生物だ」と感じました。また、2000年から2年間分子科学研究所の流動部門の助教授として赴任し、ゲルのシミュレーションをテーマにしていました。
金沢大学に戻った後、分子細胞生物学の本を大学院生たちと読むことにしました。夏休みの5日間、午前中は輪講、午後は各自予習でした。その後、共同研究の機会に恵まれ、ペプチド鎖と生体膜のシミュレーションによる研究に取り組みました。
2009年4月から前任校の東京薬科大学生命科学部に教授として赴任しました。そこでは生命科学や医学を専門とされる先生方と共同研究をさせていただき、現在に至ります。図はその一例です。生体分子はニュートンの運動方程式に従って運動しています。生物と物理が関係のある一例です。

  • 図 筋疾患に関係したタンパク質FHL1 中のLIM2ドメインの変異体Cys150Tyr。 (緑 : 0 ns、橙 : 1000 ns)[ 作成:中島 基邦(東京薬科大学客員研究員)]

現在のゼミの様子

ご縁があって2025年4月から本学情報数理科学科の生物担当の特任教授として着任しました。
現在の4年生がゼミ1期生です。今年度前期に勉強した本は『細胞の物理生物学』(「ゼミの小物」参照)と『分子シミュレーション』(上田顯著、朝倉書店、2003年)です。後期は学生がそれぞれ興味のあるテーマについてモデルを作成し、シミュレーションを行う予定です。また、ゼミのメンバーたちと東京薬科大学を訪れて、薬用植物園を見学しました。
分野の垣根を超えた研究の面白さをゼミ生に伝えられるとうれしいです。 

ゼミの小物

『細胞の物理生物学』(共立出版、2011年)R. Phillips 他著/ 笹井理生 他訳

物理的な手法を使って生物を考えるための入門書です。生物の写真や図も豊富で楽しい本です。ゼミでは、担当者がレジュメを作って発表し、他の学生が質問をします。
  • 高須 昌子

    情報数理科学科 情報数理科学専攻 特任教授
    1988年東京大学理学系研究科博士課程修了(理学博士)。金沢大学助手、カルフォルニア大学バークレー校ポスドク研究員、分子科学研究所助教授、金沢大学准教授、東京薬科大学教授などを経て現職。