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[レポート]

「文化心理学(グローバル社会)」-公文和子氏講演会レポート

Tue.

2025年10月28日(火)3限の「文化心理学(グローバル社会)」(担当:高柳妙子特任准教授)にて、小児科医であり国際協力の専門家である公文和子先生をゲストスピーカーとしてお招きしました。講義履修者35名に加え、教職員および他学科の学生も多数参加し、全体で約45名が熱心に耳を傾けました。

公文先生は、日本で小児科医として勤務した後、国際協力の現場へ活動の場を広げ、現在はケニアで障害のある子どもたちとその家族を支援する施設「シロアムの園」を運営されています。こうした長年の活動は広く社会から評価されており、今年、女性のキャリアとライフスタイルを応援する月刊誌『日経ウーマン』が選出する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2026」において、各界で活躍した7名のうちの一人として受賞されました。この受賞は、公文先生の実践が国内外から高く評価されていることを示すものです。

講演では、ケニアにおける障害児を取り巻く社会的背景と、現地で積み重ねてきた包括的支援の取り組みが紹介されました。ケニアでは、いまだ障害が「呪い」や「恥」と捉えられる文化的背景が根強く、家庭内に閉じ込められる子どもが存在すること、専門医療の不足や医療費負担、リハビリ施設の欠如など、さまざまな課題があることが語られました。

こうした状況に対し、「シロアムの園」では医療・リハビリ・教育支援・家庭訪問・栄養改善を組み合わせた包括的ケアを実施しています。特に、母親同士が支え合うグループ活動を大切にし、家族が孤立せずに子どものケアを継続できる環境づくりに力を注いでいる点が特徴です。寝たきりで来園した子どもが座位を獲得した事例や、母親が仲間とのつながりを通じて自信を取り戻したエピソードなど、現場からの温かな実践も紹介されました。

講演後の学生の振り返りには、
「言葉がなくても心を通わせ、共に何かを生み出せることを学んだ」
「他者を理解し、共感し、行動する姿勢の大切さを実感した」
「現場で活動する方の話を直接聞くことで視野が広がった」
など、多様な感想が寄せられました。

本講演は、「共に生きる社会」をどのように実現するかを考える貴重な機会となり、ケニアにおける弱い立場の子どもや家族に寄り添う支援のあり方を深く考える学びの時間となりました。

左から、講演会開催にあたりご協力いただいた秋田彰子さん(本学卒業生)、公文和子先生、森本あんり学長、高柳妙子特任准教授

講師プロフィール

  • 公文 和子氏 シロアムの園代表/小児科医

    1994年 北海道大学医学部卒。小児科医。
    シエラレオネ,カンボジア等での活動を経て、2002年から現在までケニアで活動。障がい児の支援施設「シロアムの園」代表。