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東京女子大学

Vol.6 下澤昌史さん

「最終学歴から女性だと思われることも」

2009年 理学研究科博士後期課程修了
ソフトウェア開発

大学受験の際、就職の事を考慮に入れ機械工学に進みたいと考えていたが、元々数学が好きであったことに加え、友人の影響もあり数学科に進学することを決意。数学を学ぶうえで素晴らしい先生方や先輩に恵まれきたこともあり非常に幸運であった。

「女子大にも来たんです!」
修士課程を終え、ソフトウェア開発の企業に就職したが、仕事をしつつも数学を研究したいという気持ちはあり続けた。数学の場合、学部を卒業した段階では新しい結果を生み出すのは難しく、修士で研究分野を決めその分野の研究をスタートするというのが一般であった。その為、思い描いた研究をできるのが博士課程だと考えていたからだ。そのような思いを抱きながら数年が過ぎ、ある研究者の知り合いから「社会人制度が整っている大学がある」と東京女子大学を紹介された。しかし、仕事を考えた時に両立は難しいのではと考え一度は諦めようと思った。だが、やってみればいいじゃないかと先生方や先輩が後押ししてくれたこと、助けてくれる方が大勢いたことにより、やってみようと決意した。 

「研究職はむしろ女性向きなのでは」

現在、企業研究所の仕事に従事している。「研究所」というと暗いイメージをしがちだが、私服ということもあり雰囲気は大学に近い。研究所の業務は、研究テーマを事業部に提案し研究を行う。論文、特許の作成や社外発表等はあるが、基本的に研究をすることが仕事である為、ある程度自分の裁量で仕事ができ、時間の融通もききやすいと思う。研究を進めたいのであれば残業も視野に入れどんどん仕事をこなしてもいいし、自分のやるべき事さえやれば定時で帰宅もできる。

職場は男性が多い環境である。だが、様々な人が働きやすい環境を構築し、人の力を引き出すことで企業の競争力に活かそうという考えから、女性を増やそうという動きが高まっている。結婚後など必要な女性支援が広がり、企業としての入り口は広くなりつつある。博士課程に進学すると就職できないのでは?というイメージは、研究所に関して言えばそうではなく、むしろ博士を卒業された方が多い。また人材育成の一環として進学支援制度を設けている企業も数多くあり、制度を利用し就職してから博士課程に進学する方も多い。聞くところによると環境やイメージによるものからか、女性からの応募が少ないようだが、そういったイメージを払拭すべく企業側は様々な取り組みを行っており、支援する体制は整っている。まずはイメージにとらわれずに、踏み出してみる事が大きな一歩。 

「やってみて、考えればいい」

博士課程に進学して数学を研究するのは楽しく、こんな事を話してみよう、こんな結果がでたから早くゼミをしたいと思う反面、結果が出ない時には辛いという繰り返しであった。もちろん研究に対してもっと時間が欲しいと思う面もあったが、現在の仕事を通してしか得られなかった知識や技術があるという事実が、仕事と研究の両方を頑張れる要因でもあった。数学の研究の中ですぐに仕事に直結するものは多くない。だからと言って不必要であるとは言えない。次の世代の人達が現代では想像できない関係性を見つけ、実用化してくれるかも知れないからである。数学は未知な事象、困難な問題へのアプローチ方法を学ぶ学問であるのと同時に、何かしらの新しいルールを見つけ出す学問であるとも考えている。つまり数学の結果には先人達の素晴らしく美しいアイディアがちりばめられているのだ。その先人が残してくれた財産の一つを研究し、発展することには大きな意味があるのではないだろうか。今は仕事で得た知識を研究している数学に応用しようと試みている。

「やってみて気づけることもある。悩んでいるならやってみればいい」 

最後に進学後の企業への就職が不安で迷っている方へ

近年、企業が求める人材像として自立的に仕事をすすめられる人が第一に挙げられる。数年前までは会社の命令に従って行動できる人材が求められていたのだが、市場の急激な変化に対応する為、自分自身の意思によって迅速に判断し行動できる人材が必要とされている。先程お話した通り、大学院とはまさしく自立型人材育成の場として最適であり、だからこそ企業側も人材育成の場として進学を支援している。今後益々企業がそのような人材を必要とする傾向は強まるであろう。だから不安に思わず、迷っているなら進学してみてはどうだろう。きっと私の時と同じように、東京女子大学の素晴らしい先生方や職員の方々があなたの研究生活をサポートしてくれるはず。

あとはほんの少しの勇気を持つだけ…頑張って。 

インタビューを終えて

「悩んでいるならやってみれば良い」という言葉に共感しました。仕事で得た知識や技術を数学の研究に活かせないか? また、仕事に数学の研究を応用できないか? 仕事と研究の相乗効果を生み出すことを目指し続ける。私も、そのような信念の基、新たな一歩をふみ出し続けたいと思います。

お忙しい中、長時間のインタビュー、ありがとうございました。