申込不要受付中締切間近終了
東京女子大学

ストーリー

[教職員]

変わらない普遍性と美。数学は芸術と同じく、自由で創造的な営みである

東京女子大学 現代教養学部 数理科学科 数学専攻 准教授 山内 博(2022年取材当時)

数学は「幾何学」「解析学」「代数学」の3つに大別できますが、私の専門は代数学。代数学は、古くは方程式の解法を扱う分野でしたが、現在ではいくつか演算を持った体系を扱うことを主眼とします。演算とは、四則計算のように2つの数a,bの組から1つの数c=a*bを対応させる場合の操作のこと。代数学とは、演算の法則性を使いながら数の関係や定理を導いていく学問といえます。

代数学の中でも、私の専門は頂点代数の研究です。頂点代数は無限個の演算を持った複雑な代数系ですが、非常に高い対称性を備えており、物理の弦理論にも応用されるなど大変魅力的な研究対象です。「こんなふうにやったら解けるのではないか」と仮説を立ててきちんと証明できた時はとてもうれしく、その過程は自由で創造的な営みです。発見までは長い時間がかかりますが、発見時点では世界で自分だけが知っている成果になります。その創造性が数学の大きな魅力だと感じます。その分、アイデアが重要ですが、良いアイデアを一人で出すのは難しく、近年は国内・海外を問わず共同研究者と議論しながら研究を進めています。

数学は時代や場所が変わっても価値が変わらない普遍性があり、私にとっては芸術と同じです。音楽が貧困やジェンダー問題を直接的に解決しないように、数学もまた、社会の課題を直接的に解決することはできません。しかし古代ギリシアの時代から続く学問で、一度証明された価値は変わらず、ある意味、時代や社会を超える共通言語として数学は存在しているのだと思います。高校までの数学は「与えられた問題を解く」というイメージが強いかもしれません。しかし学問としての数学は、自ら問題を設定し、それに対する新しい理論を展開していくことによって発展してきました。数学に限らず、大学では自ら学ぶ主体性が求められます。皆さんの興味に応じて、学びたいものを探しに行くという気持ちで大学を目指してほしいと思います。
研究キーワード 頂点作用素代数 / 表現論 / 有限群論

山内 博
東京女子大学 現代教養学部 数理科学科 数学専攻 准教授 (2022年取材当時)

筑波大学大学院にて博士(理学)取得後、愛知教育大学などを経て現職。専門は有限群論、頂点作用素代数。論文に“Vertex operatoralgebras generated by Ising vectors of sigma-type”(2018年、Cuipo Jiang, Ching Hung Lamらとの共同研究)、“The Conway-Miyamoto correspondences for the Fischer 3-transpositiongroups”(2022年、Ching Hung Lamとの共著論文)など。