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東京女子大学

ストーリー

[教職員]

教育と研究の現場から、東京女子大学を語る

東京女子大学 現代教養学部 学部長 心理・コミュニケーション学科 コミュニケーション専攻 教授 小田 浩一・人文学科 日本文学専攻 教授 丸山 直子

東京女子大学ならではの教育が生み出す人物とは。伝統あるキリスト教の精神に基づくリベラル・アーツ教育が、変化の激しい現代において支持されているのはなぜか。
2人の教授に今の教育について伺った。

ひとつの学問領域で解決しない課題へ
多面的にアプローチする

小田:現代社会が抱えている課題は複雑化しており、ひとつの学問分野で解決するのは難しい状況を迎えていると感じています。私が専門としている「コミュニケーション」の問題も、心理学的な考え方や社会学的側面からの分析など、多面的なアプローチが求められる分野。多様な視点や思考で課題に向き合う、比較的新しい学際的な学問だと考えています。

丸山:私の専門は日本文学の「日本語学」です。小田先生とは全く逆の、昔からある学問で、専門性がはっきりしています。ただ本学は、私が東京女子大学の学生の頃からコンピュータで日本語を解析する言語情報処理に取り組んでおり、私自身、「情報処理」が研究のもうひとつの軸になっています。幅広く学ぶことは重要ですが、ひとつを掘り下げて探究すると今まで見えなかったことが見えてくるようになります。

小田:どちらの学びも「専門性をもつ教養人」の育成という東京女子大学のリベラル・アーツ教育だと思います。本学のカリキュラムは自由選択科目をかなり増やしているので、どの専攻の学生も幅広い科目を受講していますね。

丸山:副専攻が、専門に加えて2つ目の軸になっている学生も多いです。専門性を2つ持てばさらに面白く学べるのではないでしょうか。副専攻はキリスト教学や女性学、比較文学などがありますが、2022年度からは新たにデータサイエンスも開講されました。

小田:コンピュータを使った日本語の研究は、今の時代では受け入れられていますが、丸山先生の学生時代はどうでしたか?

丸山:異端児でした(笑)。今は注目されていますが、当時から情報処理を活用した研究がなされていたのは、本学が先駆的だったからでしょう。

小田:自然言語処理という領域ができ、データサイエンスと日本語の研究でそれが実現可能であることが分かってきました。どの学問にもデータサイエンスにより世界が広がる可能性があるわけです。リベラル・アーツという視点において大事なところですね。

丸山:現代においてデータは重要です。単に技術的なことではなく、データを扱う考え方を理解しておくことが大切になると考えています。

小田:そうですね。情報過多な時代、学生には一次資料にあたりなさいと指導しています。人の意見に惑わされることなく、自分で真実を見つけ、考えることが必要です。

日本の未来を考えるチャンスを提供したい
自分が関与することで世界が変わっていく

答えのない問題にどう向き合うのか
その姿勢を共に学ぶ

丸山:この大学の先生方は、積極的にフィールドワークで学生にさまざまな経験をさせています。例えば方言を研究している先生が、地域の人と話をしながら方言を採取・分析する現場へ積極的に学生を連れ出しています。

小田:「ナマ」で体験するというのは情報量が全然違います。教科書に載っているのはエッセンスだけで、実際に行ってみると多くのことが分かりますよね。それと同時に、現地の生活や気候や食べ物に興味を持つ。風土や慣習が文化として言葉にも影響するので、一見関係のなさそうなことも言葉の研究に大きく関わってきます。

丸山:学生と一緒に現地で研究を展開するような対応は、少人数教育だからできることですね。

小田:そして、ゼミが多いことも本学ならではの特徴と言えるでしょう。学生が関心のあるゼミに所属し、自らの研究に関する文献を見つけて調べて考えをプレゼンし、その内容について学生同士でディスカッションしています。

丸山:グループワークも増えていますよね。教員の考えを一方的に伝えるのではなく、学生から出てきたものを吸い上げて、新しいものとして提示する。それについて学生が再びディスカッションをするという繰り返しです。

小田:そうして議論をするなかで気づきがあり、問題解決能力がだんだんついてくる。教員も答えを知っているわけじゃないというのが、非常に重要なところです。社会に出れば、答えがいつも決まっているわけじゃないですからね。すでにあることを習うのではなく、これから起こる、答えが分からない社会の問題を考えるのが面白いのではないでしょうか。未来を考える力を育てるのが東京女子大学のリベラル・アーツ教育だと思います。「今のままでいい」ではなく、自分が関与することで世界が変わっていくことを、学生たちには分かってもらいたいと思っています。

丸山:高校までの教育は全国一律が基本で、正解があります。だけど大学に入ったらそうじゃない。一人ひとりが課題を見つけ、自身が深めたいところを自分で追究していく。自分の頭の中に世界を構築するのは自分だということをいつも言っています。女性だけののびのびした環境のなかで、本学の学生たちの成長する力は想像を超えています。だから私たち教員はちょっと後押しするくらいで、あとは学生が自分たちでどんどんやっていますよね。大学教員の役目は学生にショックを与えることだとおっしゃった先生がいらっしゃいました。「えっ!?」って思わせることから出発する。これからも学生を動かすような授業をしていきたいですね。

幅広く学ぶことと、ひとつを掘り下げることで
今まで見えなかったことが見えてくる

世の中を良く変えていきたい
学生たちが未来をつくる

小田:東京女子大学はキリスト教主義の大学ですので、キリスト教的な考え方を学びます。簡単に言うと、みんなでいいことをしようという考え方。だからSocialGoodなことに対して、積極的に取り組む文化があります。

丸山:私はキリスト教徒ではありませんが、学生時代からキリスト教的な考え方に接してきたことは、とてもよかったと感じます。日本の仏教だけではなく、キリスト教をきちんと学ぶことで、学問的にも人格形成においても得るものは多かったと思います。

小田:世の中は一体どうしたらよくなるのかを考えることで、人生が全く変わります。本学の学生たちは世の中を変えようと考えています。社会を動かすために必要な力がこのキリスト教の精神に基づくリベラル・アーツ教育のなかで育っていることを実感しています。
小田 浩一
東京女子大学 現代教養学部 学部長 心理・コミュニケーション学科 コミュニケーション専攻 教授
丸山 直子
東京女子大学 現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授