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東京女子大学

ストーリー

[在学生]

人々の苦しみを救うために、哲学的な視点は役に立つと信じている

人文学科哲学専攻4年<取材時の学年>埼玉県立大宮光陵高等学校 出身

「当たり前」を根底から疑う知の魅力が私をとらえた

「求めよ、さらば与えられん」。4年間の日々は、新約聖書の一節そのものだったと思う。
就職か、進学か。経済的理由で進路に悩んでいたとき、東京女子大学には全額給付の奨学金が含まれた入試制度があることを、高校の担任から教えてもらった。入試まで時間がないから、とその場では断った。転機となったのは、オープンキャンパスで参加した黒崎政男教授の模擬授業だ。
講義のテーマは「木がみどりに見えるのは、木がみどりだからだ、は本当か」。隣の人と自分が見ている世界が本当に同じかどうかを疑う内容だった。

これまで、歴史を勉強したり、残虐なニュースを見聞きしたりする中で、「世界」というものを創り出してきた人間の本質を知りたいと思っていた。身内に障がい者がいて、差別を感じる経験が多いことも、その理由のひとつだった。差別や争いはなぜ起こるのか。命に優劣はあるのか。哲学を学べば、ずっと抱えていた疑問が解消できるに違いない。そう直感した。
入学してからの毎日は、刺激的だった。講義で疑問をぶつければ、応えてくれる先生がいる。本音で意見を交換できる同級生たちがいる。いろいろな授業を受けていると、それぞれで学んだことがつながる瞬間があり、その度に世界が広がっていく。求めれば求めるだけ応えてくれる知の魅力に、私は夢中になった。

卒業論文では「差別とは何か」について考察。入学前から興味があった「差別」に腰を据えてじっくり向き合ってみたかったからだ。フーコーやニーチェの思想に向き合い、人間の持つ本質的な感情を分析していく時間は、大学生活で積み重ねてきた学びの集大成になった。
卒業後は、日本赤十字社に就職する。哲学を学ぶ中で、どんなことにも「当たり前」はないと実感した。格差や差別に苦しんでいる人たちを救うために、社会のすべてを、根底を疑う。私が4年間でがむしゃらに求め、得た力はきっと将来の糧になると思う。