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東京女子大学

ストーリー

[在学生]

世界中の「当たり前」の暮らしを支える人を目指して

国際社会学科国際関係専攻3年<取材時の学年>福島県立橘高等学校 出身

アジア旅行で感じた何気ない疑問が
グローバルな学びへの入り口に

幼い頃から海外旅行で度々訪れた、活気あふれるアジアの国々。距離的には近いはずなのに、そこには日本と異なる文化や風習がたくさんあった。韓国や台湾には屋台料理の文化が根付いているのに、なぜ日本は違うんだろう。アジアの中でも「日本人はおとなしい」と言われるけれど、本当だろうか。その時に抱いた疑問が、今につながる出発点になっている。

アジアや世界について知りたい、ゆくゆくは海外に関わる仕事がしたい。そう考えていた私に東京女子大学を勧めてくれたのは、高校の先生だった。「ブランドがある大学だし、あなたが学びたいことを学べると思う」。心を決めたのは、その言葉に背中を押されたのと、他学科の科目が数多く履修できる点にも魅力を感じたからだ。

期待に胸を膨らませ、地元の福島から上京。大学のキャンパス内にある学寮での暮らしが始まった。まるで森の中にいるような落ち着いたキャンパスは居心地が良く、頼れる先輩や友人もいて、すぐに新しい生活になじむことができた。

寮では、さまざまな国から来た留学生も一緒に暮らしている。私が仲良くなったのは、中国と台湾から来た2名の留学生。一緒にご飯を食べたり、日本のアニメや趣味の話をしたり。彼女たちと過ごす時間は、旅先とはまた違う多くの気付きや発見をもたらしてくれた。

もちろん、専門分野を軸に、多様な領域を横断しながらグローバル社会を見つめる学びはとても刺激的だった。特に印象深いのは、学科を問わず受講できる「国際社会と女性の人権」という授業。私たちが享受している安価な製品・サービスは、東南アジアや中国の女性による低賃金労働や出稼ぎに支えられている——。消費者の目には届きにくい厳しい現実を知り、物事を多面的に見る重要性を強く感じた。

近くて遠い国である中国や台湾。
ニュースでは分からない、その実態を捉えたい

ゼミでは、「東アジアの国際関係」について学ぼうと決めていた。近くて遠い国である中国や台湾。その実態を正しく捉えることが、ビジネスや政治における関係構築の手がかりになると考えたからだ。だからこそ、イメージだけで研究はしたくない。そう思い、3年次の前期に、3カ月間の上海への留学に挑戦した。

現地では、多様な国から来た留学生とともに中国語の勉強に励んだ。授業の合間を縫って観光に出かけ、歴史的な建物や街並みを巡ることもあった。ニュースなどを通して抱いていた印象とは異なり、人々は伸び伸びと自分たちの暮らしを楽しんでいる。「向こうには向こうの生活があるんだ」。自分が先入観にとらわれていたことを、まざまざと思い知らされた。

とりわけ意外だったのは、列車の中で日本語を喋っていると、「あなたは中国のどこの人?」と聞かれたこと。日本語を、中国のどこかの地域の方言だと思われたのだ。多様な言語や民族が存在することは認識していたが、実際に人々もそういう感覚で生きているのだ、と改めて知れたことは大きな収穫だったと思う。

この気付きもヒントに、卒業論文では、中国国境付近の国際関係について考察したいと考えている。島国である日本からは想像しづらいけれど、中国は国境に近付くにつれて、民族分布が多様になる。そこにどんな政治的・社会的関係が存在するのかを知れば、広大な大国の違った側面を垣間見ることができるのではないだろうか。

表面的な情報だけで批判するのは簡単だ。でも、ニュースやインターネットの向こう側にある現実に目を向けたいし、学びたい。それこそが、知性ある大人への第一歩だと思うから。

自分なりの視点で世界の今を見つめ
抱いた使命感

専攻の学びの傍ら、データサイエンス副専攻も履修している。文系でもAIやデータ分析に関する分野を学べるなら学んでみたいと思ったし、「将来に生かせるかもしれない」という思いもあった。実際に、自分でも驚くほど「データを読む力」が身についた実感がある。卒業論文でも数字やデータをとり入れ、深みのある研究になればと考えている。

この数年、コロナ禍やウクライナ侵攻、ガザ地区の戦争など、いろいろなことが起きた。こうしたニュースを一歩深く捉えられるようになったのは、間違いなく多角的・客観的な視点の大切さを教えてくれたこの大学のおかげだ。

世界情勢を自分なりに読み解く中で、人やモノ、情報の分断が、いかに人々の生活を困難にするかを痛感したことから、現在はIT業界・物流業界を志望している。グローバル社会に欠かせないインフラを支える仕事に就き、世界中の「当たり前」の暮らしを守ること。それが、今の私の目標だ。