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東京女子大学

ストーリー

[在学生]

子ども時代の温かな経験を育む支援員を目指して

心理・コミュニケーション学科心理学専攻4年次<取材時の学年>東京都・私立晃華学園高等学校 出身

多角的に心理学を学べる環境に惹かれて

通っていた中高一貫校では、年に一度、生徒全員がスクールカウンセラーによるカウンセリングを受けることができた。それが私と心理学との出会いだ。親や教員以外の大人に自分の話を聞いてもらえるという体験は、思春期の私にはありがたかった。両親ともに教員という家庭に育った影響で教育や子どもに関する仕事には関心があったけれど、教員以外で子どもの心にこんなふうに関われる仕事は素敵だなと思い、心理学に興味を持った。

でも、調べてみると、心理学には「発達心理学」「認知心理学」「社会心理学」などさまざまな分野がある。文理選択で迷うほどだったのに、心理学の中で自分の関心を絞り込むのは、高校生の私には難しかった。

そんなときに友人に誘われて参加したのが、東京女子大学のオープンキャンパスだ。この大学には、心理学に関するさまざまな領域の先生が在籍されている。「ここなら、心理学を幅広く学びながら、自分の好きな分野を探すことができる」と思った。美しいキャンパスを歩きながら、友人に「東京女子大学の雰囲気が似合うね」と言われたことを、今でもよく覚えている。

人の一生を通じた心の発達の中で
「世代継承性」に焦点を当てる

晴れて入学でき、心理学に触れると、その楽しさは予想以上だった。もともと理系科目も好きだったのだが、心理学には、精神医学や認知科学、神経のはたらきなど、理系科目にも通じる奥深さがあり、心という見えない対象に科学的にアプローチするところが性に合っていたのだと思う。
ゼミは発達心理学を選んだ。子どもの心や教育に関心があったことに加え、発達心理学が前提とする「人は生まれてからその一生を終えるまで認知的・情緒的に変化していく」という考えに、「人は子どもの間だけではなくて、一生成長していくのだな」と、心を奪われたからだ。大人の心理的発達に目を向けるのは、面白そうだと思った。

卒論では、青年期の「次世代育成力」を研究している。次世代育成力とは、「次世代の子どもたちを生み育てることへの自信」のことだ。
発達心理学者のエリクソンは、人は成人期中期になると、次世代を創造しケアしようとする「世代継承性」を抱くと提唱している。しかし、日本は少子高齢化が深刻化している。親の「孫の顔を見せなさい」「親にもらった身体は大事にしなさい」といった言葉は、だんだん疎んじられているように思う。「自分とは何か」を考えてみた時、自分の命ははるか昔から受け継がれてきたものなのに、現代の私たちは、自分の身体がどこか自分ひとりだけのものとして完結しているイメージを持っているように思う。

でも、人には本来、自分の命が受け継がれていくことの喜びが存在しているはずだ。
それはどのように育まれ、あるいは阻害されるのか。成人期中期の前段階である青年期に目を向け、どのような要因が「世代継承性」、そしてそれを踏まえた「次世代育成力」に影響を及ぼすのかを探索的に検討することは、少子化問題を考えるうえで意義あることだと思った。

「次世代育成力」はさまざまな要因が関係していて、はっきりとした正解が出ない。しかし、そもそも大学での学びは、明確な答えが出ない問いに向き合っていくものだ。この大学では、先生たちが一人ひとりに手厚く指導してくださり、悩んだときは相談に行くことができるし、新たな文献を読むことで、ハッとする出会いがあったりする。すぐに答えが出なくても、粘り強く、広い視野から問いに向き合う力を、この大学は育ててくれると思う。

大学で得た知見や姿勢を生かし
子どもの支援に関わる仕事で社会に貢献したい

もう一つ、この大学の魅力は、キリスト教に基づく人格教育があるところだと思う。
東京女子大学では、キリスト教学の講義や礼拝での講話で、心に響くお話をたくさん聞くことができる。とくに印象に残っている教えは、次のようなものだ。
「人には、それぞれの存在の意味があり、与えられた使命がある。自分の個性や能力は自分のために使うことに加え、他者に使えば使うほど実り豊かなものになる」。
こうした学びを深める中で、私は次第に、自分の力を子どもや次世代に関わる仕事に使っていきたいと思うようになった。

大人の心理的発達には、子ども時代の発達が影響している。上の世代と温かな関わりができたという経験が、次世代育成力も高めてくれる。心理学に興味を持った原点である「子どもの心」に関わりたい。
そうした想いから、私は卒業後、児童発達支援をしている会社で、発達障がいや困りごとを抱える子どもたちの支援員として働くことを選んだ。

支援員の仕事では、この大学で学んだ心理学の知見や姿勢がきっと役に立つだろう。これからも、学び続ける姿勢を忘れずに、さらに学びを深めていきたい。
「自分の能力は他者に使えば使うほど実り豊かなものになる」。その教えを胸に、子どもたちがその子らしく生きていく手助けをしていきたいと思っている。