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東京女子大学

ストーリー

[在学生]

人々の暮らしの中に ITで新しい「当たり前」をつくりたい

数理科学科情報理学専攻4年<取材時の学年>東京都立国分寺高等学校 出身

違う領域の学びが
自分の中でつながる瞬間が楽しい

「学んだことは一切ないけど、面白そうだな」—。

高校時代の私のプログラミングへの想いは、そんな些細なものだった。ちょうど「これからはプログラミングの時代だ」と言われ、学ぶ人が増え始めた時期。当時は「やってみようかな」という軽い気持ちで、仕事にしようとか、情報を学んで何ができるのかということまでは、深く考えていなかった。

東京女子大学を選んだのは、自分自身が興味を絞り切れてなかったこと、また、文理の垣根を越えて幅広く学べる点に惹かれたからだ。

入ってみると、想像以上に選択の幅が広く、「こんなに広く学べるのか!」と衝撃を受けた。他学科の科目もたくさん履修。必修のキリスト教の授業では、馴染みがなかったキリスト教の教えが自分の生活とつながる瞬間にハッとしたり、経済学の授業では、市場のニーズやお金の動きが数式で表されることに驚いたり。いろいろな学問が自分の中でつながっていく瞬間にドキドキした。

所属する専攻ではプログラミングを基礎から履修。全くの未経験だったけれど、手厚い指導のおかげで安心して授業を受けることができた。他専攻の人もプログラミングの授業を受けていたが、一人ひとりの理解度に応じて丁寧に教えてくれるのは、この大学のすばらしいところだと思う。

実現したいアイデアを形に。
他の学問領域との掛け合わせで学ぶ
プログラミングの可能性

初めて学ぶプログラミングは、まるでパズルのようだった。一つひとつのブロックをつなげていくことで何かができる。パズルを組み合わせれば、自分が作りたいと思ったものが形になる。年次が上がるにつれて高度になり、「こんなものが自分で作れるんだ!」という驚きと達成感があった。

加えて、この専攻ではプログラミングだけではなく、数学や物理、生物、化学なども一緒に学べるのが特長だ。

例えば数理生物学の授業では、ウサギとヤマネコの食べる・食べられる関係性を数理モデルという数式に起こし、プログラミングで動かしてみる。すると、ウサギの個体数の増減を検証できるという具合。プログラミングだけなら学べるところは他にあるかもしれないけれど、こんなふうに他の学問領域の知識との掛け合わせで学べるから、実践的な研究につながると思う。

こうした学びと併行して、私が大学生活で力を入れたことが、不登校児童生徒の学習支援ボランティア活動だ。

教室に入ることができない子どもたちを対象に勉強やカウンセリングを行う。個々の悩みを抱える子どもに心を開くことができるよう、話し方や聴き方に気を配り、丁寧に向き合った。それでも、ちょうどコロナが蔓延し、活動が制限されていた時期。マスク着用のため表情が読めず、戸惑いを感じることが多かった。


子どもたちは、休み時間も座ったまま、運動会がなくなるなど、いろいろな制限下にあり、私は彼らの元気が失われているのを目の当たりにした。言語や他者との関わり方を活動から学ぶことの大切さに、改めて気付かされたのだ。

多角的に社会を捉える学びを
暮らしに寄り添うITサービスに生かす

「マスク着用で表情や口元からの情報が奪われると、子どもの言語発達に影響を与える」という報道を目にしたのは、そんな時だった。

IT技術で、コロナ禍での子どもたちの生活を変えられないだろうか—。私は卒業研究のテーマを決めた。それは「音声から感情を推定し、読み取った感情をアバターや小型ロボットで再現するシステムの構築」だ。感情を正確に表現するアバターやロボットがあれば、マスク着用下であっても子どもたちにもっと寄り添えると思ったのだ。

研究は想像以上に大変だった。音声を正確にテキスト化するのも、そこから感情を推定するのも、思うようにいかなかった。しかし、音声認識AIやプログラミング言語を駆使し、最終的には高い再現度でアバターに反映させることができた。

東京女子大学では、他学科の科目を履修できることで、物事を視る視野が広がる。それをまた、所属する専攻に生かし、「IT技術でできることはないだろうか?」と考えることができる。コミュニケーション専攻の科目で「会話」について学んだことも卒業研究に生かされたと思う。

ICT技術は、個別の事情で学校に通えない、授業に付いていけないなど、公教育が取りこぼす多様なニーズにもっと役に立てるだろう。そして、教育以外にもさまざまな面で、人々の生活を豊かにする力があるはずだ。そんなふうに考えるようになったのは、教育現場に出入りした経験はもちろん、社会を広い視点で捉える学びのおかげだと思うのだ。

卒業後は、教育や福祉、スポーツ、自治体のシステムなどを手がけているIT企業で技術者として働くことになっている。

ここでの学びを糧に、将来は人々の暮らしに溶け込むような技術で新しい「当たり前」をつくりたい。技術を導入して終わりではなく、導入することで変化する暮らしの在り方に着目しながら、広い視野を持って仕事をしていくのが私の目標だ。