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東京女子大学

ストーリー

[教職員]

現代日本語の中に存在する多様性に目を向け方言の面白さを社会に発信する

東京女子大学 現代教養学部人文学科 日本文学専攻 教授 篠崎 晃一

私たちが普段使っている言葉の多様性を研究する社会言語学。中でも私は、地域的なバリエーション、いわゆる方言に興味を持って研究を続けています。

方言と聞くと「年配者が使う古い言葉」という印象を持つかもしれません。しかし実際には若い人も含め、共通語にはない表現を生き生きと、多くの場合は方言と気づかずに使っています。私自身、大学院時代にそれまで共通語と信じて疑わなかった言葉が方言と知って衝撃を受けたのが、この研究を選んだ契機になりました。地方特有の言葉に出合ったときやその語源を解明できたときに方言研究の醍醐味を感じます。学生のモチベーションを高め、方言の面白さを社会に発信する活動にも積極的に取り組んでいます。近年では、ゼミ生と一緒に「出身地鑑定!!方言チャート」や「県人度判定」といったWebアプリを開発。地域限定の言葉を知っているかどうか、簡単な質問に答えるだけで出身地や地元への愛着度を判定できるアプリで、SNSを中心に大きな話題になりました。また、方言に限らず、依頼の仕方やお詫びの仕方、断り方など、言語行動と呼ばれる分野の地域差にも関心を持っています。

例をあげると「待ち合わせに遅れたときに先に謝るか、理由を述べて最後に謝るのか」など、会話の構造における地域差の研究です。調査を進めるうち、会話の展開にも地域差があることが分かってきており、この研究を活用すればサービス業で地域ごとにマニュアルを変える、売上促進に地域差を反映させるということも可能ではないかと感じています。

近年、方言は地域をアピールするブランドとして捉えられ、観光誘致の広告で使われたり、SNSであえて方言を使ったりされるようになりました。方言を捉えることは、その言葉の変化過程を解明する、ひいては社会生活を解明し、今の社会や過去の社会をも見つめることにつながります。現代日本語の中に多くの多様性が存在していることを認識し、自分たちが生きるこの社会を大事にする感覚を養っていただければと思います。
研究キーワード 方言 / 言語行動 / 言語変化
篠崎 晃一
東京女子大学 現代教養学部 人文学科 日本文学専攻 教授

専門は方言学、社会言語学。単書に『東京のきつねが大阪でたぬきにばける 誤解されやすい方言小辞典』(三省堂)、『それいけ!方言探偵団』(平凡社新書)など、共著に『方言の地図帳』(講談社学術文庫)、『出身地(イナカ)がわかる方言』(幻冬舎文庫)など多数。『例解新国語辞典 第十版』(三省堂)編修代表。Webアプリ『出身地鑑定!!方言チャート』開発も手がけるなど、研究成果を積極的に社会に発信している。