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東京女子大学

ストーリー

[教職員]

経済学の視点と数値を武器に気候変動問題に対する効果的なアプローチを提案する

東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 経済学専攻 教授 二村 真理子(取材当時)

早急な解決を迫られている気候変動問題。経済成長との両立を維持しつつ、持続可能な方法で削減目標を達成するための方策を、経済学の観点から提案するのが私の研究です。中でも、運輸部門のCO2排出量削減政策の効果について、計量モデルを用い定量的に推計・検証する研究を続けています。

例えば、運輸部門の中で最もCO2排出量が多い自動車に対し、国内では、炭素の含有量に応じて税金をかける「炭素税」よりも、自動車の性能向上を図る取り組みが行われてきました。私の研究では、こうした政策の効果をさまざまな統計データを用いて実証分析をしています。確かに自動車の低燃化によりCO2排出量は削減しましたが、積雪量が多い地域では電気自動車などの普及は進んでいません。これはディーゼル車やガソリン車に比べて動力が弱く、大雪・猛吹雪時のトラブルに対応しづらいと受け止められていることが背景にあります。研究ではこの現象を「雪国ダミー」と捉えることにより、自動車性能の向上によるCO2削減効果には地域的な差異があり、政策に地域性を反映する必要性を実証しています。また、最近は国連による企業をターゲットとしたサプライチェーン単位のCO2削減の取り組み(SBTi)や国境炭素税、海運分野の環境規制にも関心を広げています。海洋分野では船舶燃料に含まれる硫黄酸化物(SOx)の濃度を従来の3.5%から0.5%に引き下げることを義務づけた国際規制が2020年1月にスタートしました。また国際海運のカーボンニュートラルについても2050年までの達成が提案されています。このような目標達成のための支援のあり方、国際ルールの策定、さらに国内における費用負担のあり方など、経済的なアプローチで提言していきたいと思っています。

今後ますます必要となる気候変動問題への対策。私たちに必要なのは正確な知識と冷静な対応です。人の行動の変容を促す経済学の活用はとても効果的だと考えます。また、経済学は、世界を考察する有力な物差しになります。国際問題・国際関係や、さまざまな社会課題に関心がある人にも、ぜひ学んでいただきたいと思います。
研究キーワード 地球温暖化 / 物流効率化 / 環境制約下の交通政策
二村 真理子
東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 経済学専攻 教授(取材当時)

東京女子大学文理学部社会学科卒業ののち一橋大学大学院商学研究科に進学。博士(商学)。2009年東京女子大学経済学専攻准教授に着任。2016年より教授。担当科目は環境経済学、都市・地域経済学、ロジスティクス論など。