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東京女子大学

ストーリー

[教職員]

現地の思考で物事を視る地域研究の手法で過去から現在につながる朝鮮半島の国際関係を紐解く

東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 准教授 森 万佑子(取材当時)

地域研究とは、地域特有の文化や社会・政治・経済の仕組み、人々の生き方・考え方などを理解しようとする学問です。政治学・経済学・社会学などの既存の学問では捉えきれない地域の固有性や特性を広く考察します。私が対象としているのは朝鮮半島。特に、近代の朝鮮半島を中心に東アジアの国際関係を研究しています。

私が高校生のとき、韓国の金大中大統領と北朝鮮の金正日総書記(当時)による初の南北首脳会談が行われました。当時は南北統一の機運が高まっており、報道を見ながら、朝鮮半島をめぐる国際政治がどのように動いているのか強く関心を抱きました。以来、地域研究の手法で、朝鮮半島が分断される前、特に植民地(日本統治)期以前の朝鮮の政治外交を紐解くことで、現代に続く、あるいは、植民地期によって閉ざされた朝鮮外交の変容を理解しようとしています。

近年では、拙書『韓国併合—大韓帝国の成立から崩壊まで』を刊行。1894年の日清戦争以後、国王(のち皇帝)高宗のもと独自の近代化を推進した朝鮮王朝(のち大韓帝国)が、日本により完全に植民地化されるまでの歴史を日韓双方の視点から丹念に描きました。日本史では韓国を併合したとしか学びませんが、韓国がどのようにして併合されたのかという視点でも事象を捉えること、つまり現地の枠組みでも物事を捉えることが、地域研究には求められます。そのためには、現地の言葉を駆使し、現地の文化を学び、現地社会の一員となって生活すること、現場に行き、現場を歩くことで、その地や人々、社会の雰囲気をつかむことを大切にしています。また、研究対象とする時代の史料を読み解きながら、同時に現在の韓国社会や北朝鮮にも目を向けて、過去と現在を絶えず往来する視点にもこだわっています。研究を通じ、史実を伝えるだけに終わらず、朝鮮半島を取り巻く現代の国際関係を理解するヒントを提示していきたいと思っています。

大学時代は、自分とじっくり向き合う大切な時間です。ゼミでは論文を書く過程を通し、本当にやりたいことを探すサポートをしたいと思っています。皆さんと一緒に学べることを楽しみにしています。
研究キーワード 韓国史 / 朝鮮政治外交史 / 東アジア国際関係


森 万佑子
東京女子大学 現代教養学部 国際社会学科 准教授 (取材当時)

博士(学術)。韓国・ソウル大学校人文大学国史学科博士課程単位取得修了、東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻満期退学。2018年より東京女子大学現代教養学部専任講師、現在同准教授。専門は韓国・朝鮮研究、朝鮮近代史。著書に『韓国併合—大韓帝国の成立から崩壊まで』(中公新書、2022年)、『朝鮮外交の近代—宗属関係から大韓帝国へ』(名古屋大学出版会、2017年)など。