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東京女子大学

ストーリー

[教職員]

家族の関係は、“きずな”か“しがらみ”か。 密なまとまりをつなげている会話の研究を臨床や教育へ応用する

東京女子大学 現代教養学部 心理・コミュニケーション学科 心理学専攻 准教授 花田 里欧子

家族等の近しい関係における密なつながりやまとまりに着目し、心理臨床に関わる会話データの収集・分析を通じてコミュニケーションの基礎的研究とその臨床的、教育的応用をすすめています。現在は、日本語臨床心理面接コーパス※1に加えて、多言語臨床心理面接コーパスの構築や、『死の棘』等の作品で知られる島尾敏雄とその妻や子どもたちが残した資料の検討をご遺族の協力のもと行っています。

家族というまとまりをつなげているのは、“きずな”でもあり“しがらみ”でもあるかもしれません。臨床の現場では、この密な関係に、驚くほどの喜びと悲しみが同時にあることを目のあたりにします。こうしたアンビバレントなつながりのなかで、家族は可笑しみや苦しみを日々経験しながら、それでもなお、まとまっていようとするのはなぜなのでしょうか? そもそも家族とはなんなのでしょうか? このような家族をはじめとする密で不思議な生々しい関係の理解や支援が私の研究テーマです。密な人々がどのようにやりとりし、また密な人々の支援に携わる人たちはどのように彼らとやりとりできるのか、さらにその背景となる文化や使用する言語によるやりとりのありようを明らかにしていくことで、実際の会話データの研究から分かることを臨床に活かし教育で伝えていく中で出会う新たな問いに取り組んできました。

特に最近は、在外研究中に海外研究者からしばしば日本の「ジェンダー・ギャップ指数」※2が先進国の中で最低レベルであるのをとても心配されたことで、改めてこのことに向き合う必要を感じています。新型コロナウイルス感染症の拡大は状況をさらに悪化させており、女性のメンタルヘルスへの深刻な影響が明らかになってきました。家族等の理解や支援の一環として、今後女性の視点からメンタルヘルスの促進を実現するツール、リソース、機会を提供する学習プラットフォームの設計を進めていきたいと考えています。
研究キーワード 家族 / コミュニケーション
花田 里欧子
東京女子大学 現代教養学部 心理・コミュニケーション学科 心理学専攻 准教授

東京女子大学文理学部心理学科卒業ののち東北大学大学院教育学研究科に進学。博士(教育学)。2014年東京女子大学心理学専攻准教授に着任。専門は臨床心理学、家族心理学、家族療法、短期療法/ブリーフセラピーなど。