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東京女子大学

ストーリー

[在学生]

寄り添い、支え合える人に。タイ・ワークキャンプでボランティアを経験して

人文学科 歴史文化専攻4年次 松本朋子 / 国際社会学科 国際関係専攻4年次 稲見朱莉 / 国際社会学科 国際関係専攻4年次 宮林悠莉

通常の講義に加え、さまざまなボランティア活動や課外プログラムを実施している東京女子大学。国際ボランティア活動として、タイ北部チェンライ郊外にある山岳少数民族の児童養護施設「メーコックファーム」で、建学の精神である「Service and Sacrifice(仕えること・捧げること)」(頭文字の「SS」は東京女子大学の校章にもなっている)の精神を実践を通して学ぶことを目的に、子どもたちと寝食をともにしながら遊び、日本語教室や畑づくり、施設の整備などの活動を行う「タイ・ワークキャンプ」がキリスト教センター主催で開催されています。

今回は、2019年に「タイ・ワークキャンプ」に参加した、松本朋子さん(歴史文化専攻)、稲見朱莉さん(国際関係専攻)、宮林悠莉さん(国際関係専攻)の3名にインタビュー。現地での体験談や、人々との交流のなかで体感した「Service and Sacrifice」の精神、また、東京女子大学で学ぶなかで変化した自分への向き合い方や過去の挫折を乗り越えたきっかけなどについて聞きました。「自分一人が頑張らなきゃ」というプレッシャーを多かれ少なかれ抱えていたという3人が、共通の体験を乗り越えたことで、柔らかな信頼関係で結ばれている姿が印象的でした。

第一志望ではなく滑り止め、指定校推薦……。それぞれの選択の先に辿り着いた「学ぶことを学ぶ大学」

—まず、みなさんはどんな子ども時代を過ごしていましたか?

稲見:私は活発な面もある一方で、ちょっとセンシティブな子どもでした。スポーツも勉強もそつなくできるけど、突出したものがなにもなく、自尊心がとても低かったです。自分がこうなりたいというよりは、周りから求められる自分にならなきゃという思いで頑張っていたのですが、高校3年生の時に心が折れて学校に行きづらくなりました。成功体験がまったくない子ども時代でしたね。

宮林:私は幼い頃から興味があることにはとりあえずチャレンジする活発な性格でした。でも、親の期待に応えなきゃいけないプレッシャーや責任感も抱いていて。4つ下の弟と6つ下の妹がいるので、幼いころから「お姉ちゃんだからしっかりしないと」という責任感のようなものがありました。それもあって人にあまり頼れない性格になっていきました。なにかをチームでやる時も、私が率先して頑張らなきゃという気持ちが強かったです。

松本:私は器用なほうではないですけど、目の前にあることに一生懸命取り組める子どもだったと思います。その性格が形成されたのは、小学5年生の時に地元の福島で体験した東日本大震災がきっかけです。「当たり前の日常」って普通じゃなくて、本当に幸せなことなんだなと感じて、日常を有意義に過ごすためにも自分が頑張れることは一生懸命取り組もう、行動の機会をちゃんと自分から得ていこうと思うようになったんです。そのマインドがタイ・ワークキャンプに参加するきっかけにもなっています。

左から稲見朱莉さん、宮林悠莉さん、松本朋子さん

—それぞれ違った幼少期を過ごしていたみなさんが、東京女子大学に入学したきっかけはなんだったのでしょう?

松本:高校3年生の時、希望進路がなかなか定まっていなかったのですが、先生に「どの大学のどの学部に行くかが重要じゃなくて、自分がどう学ぼうとするかが大事だから、4年間自分の好きなことを勉強したらいいと思う」と言われたことをきっかけに、大好きな歴史を学ぼうと思ったんです。その後、東京の大学をいくつか見に行って、東京女子大学のカリキュラムの豊富さに興味を持ちました。それに加えて、オープンキャンパスで学長が言っていた「人間は一生学ぶもの。東京女子大学は学ぶことを学ぶ大学です」という言葉に感銘を受けて、指定校推薦で入学しました。

宮林:私は幼い頃から実家で留学生を受け入れていたこともあり、国際系の学部で学ぼうと決めていました。あと、高校までの先生と生徒の距離感の近さや、親も含めて頼りになる大人が側にいる環境がとても心地よかったので、できるだけ少人数の講義が多い大学に入りたいと思っていました。第一志望だった国立大学に落ちてしまって、浪人するかどうか決めなきゃいけなくなった時に、親に「悠莉は、一度ダメだったということを受け入れて、そこからなにができるのか探せる人だと思う」と言われたんです。その言葉を受けて、東京女子大学でなにができるのか試行錯誤することが、充実した4年間につながるんじゃないかと思い入学を決めました。このタイ・ワークキャンプや国連での研修などの課外プログラムも東京女子大学だからできたことですし、実際に先生たちともすごく距離が近く、今考えれば浪人しなくて良かったです。
稲見:私も難関私立大学を目指していて、東京女子大学は滑り止めでした。東京女子大学には付属高校がなく、みんななにかしらの入試を受けて入ってくるので、積極的な人が多いんじゃないかと思って受験したんです。第一志望に落ちてしまったので、すごく気持ちが沈んだ状態で入学したのですが、悠莉は国連に行っていたり(東京女子大学創設100周年記念の「挑戦する知性」プロジェクトの一環で、ニューヨーク国連本部での海外研修に参加)、与論島の「ふるさとワーキングホリデー」に参加している子がいたり、本当に周りの子たちが積極的だったので、自分もなにかしてみたいと触発されて、タイ・ワークキャンプに参加しました。高校までは共学でしたが、女子だけという新しい環境に身を置いたことで、女性のキャリアや結婚・出産の話もするようになりましたし、女性としてどう社会に出ていくかを考えるようになりました。
松本:女性が生きていくうえで必要な知識を学ぶ機会が多いよね。ほかの学科・専攻の講義を横断して履修することができたり、「女性学」の学びが充実していたり……。大学ってただひたすら講義を聞いているだけなのかなと思っていたのですが、自分から学びにいく場面がたくさんあって、まさに「学ぶことを学ぶ」ということを実感しています。 

ボランティアをするためにタイに行ったけれど、逆に受け取るものが多かった。知識だけではなく、実感として身についた「SS精神」

—高校までとはまったく違う気付きや学びがありそうですね。そういう意味ではみなさんが参加したタイ・ワークキャンプも新しい経験だったのではないかなと思いますが、現地ではどのような活動をしていたのですか? 印象的な思い出を教えてください。

松本:現地ではボランティアの18人がA、B、Cの3グループにわかれて、子どもたちと遊んだり、日本語を教えたりしていました。そのなかで、「遊ぼう!」と私たちのところに来てくれる子が男の子ばかりだったんです。女の子は炊事のお手伝いをしていて、「あれ?」と思いました。男女関係なく平等に体験の場が与えられたらよいなと感じて、日本から持参していた折り紙を使えばみんなで交流できるかなと思い、ほかの班のボランティアの子たちにも声を掛けて、みんなで折り紙をやりました。女の子が折り紙を持って「一緒にやろう」と話しかけにきてくれた時は、関わり方の変化を感じられてうれしかったです。 

タイ・ワークキャンプ現地での様子。左が松本さん

子供たちと最後のお別れをしている時の様子

稲見:基本的に班で活動していたけど、18人全員での一体感は折り紙で感じられました。日本人メンバーとも、現地の子どもたちやスタッフとも、しっかり心でつながれた感じがして、「ボランティア活動」に対しての印象が変わった出来事でした。

—タイ・ワークキャンプは大学のキリスト教センターが企画しているプログラムですが、キリスト教センター主催だからこそ感じたことや、東京女子大学の建学精神である「Service and Sacrifice」のもとにボランティアをしたからこそ気付いたことはありますか?

松本:私たちの代は、引率の先生方も含めて現地で体調を崩してしまう人がとても多くて、チームワークを発揮しないといけない場面がすごく多かったんです。そういう意味では、ボランティアメンバー内での「Service and Sacrifice」も経験しました。

稲見:引率の先生が、「外へのSS精神(サービス・アンド・サクリファイス精神)だけではなくて、内へのSS精神も大切にしよう」とおっしゃっていて、みんなで支え合いながら活動しました。もともと必修科目の「キリスト教学」でSS精神という言葉が出てきて頭では理解していたんですけど、実際にこういったボランティア活動を通して身についた感覚を得ましたね。

現地の子どもたちと仲良くなるきっかけとなった「挨拶の踊り」

宮林:自分たちがSS精神を伝えるためにタイに行ったはずなのに、逆に受け取ることが多かったです。私たちがしたことに対して、相手も温かく受け入れてくれましたし、「あれ? 私たちボランティアに来たんだよな?」って思うほど、現地の方々が歓迎して尽くしてくれて。

松本:そういう温かさをすごく感じたよね。心の豊かさがぶわっと広がる感じがしました。人に対してなにかをしようという気持ちを向け合うことで、言葉が通じなくても心の交流が成り立つ。それは子どもたちとの交流はもちろん、仲間内でも感じたことですね。タイ・ワークキャンプを通して「SS精神ってこういうことか!」って体感しました。

一人で頑張らなくていい、リラックスしていい、自分を追い詰めなくていい。そう思えた貴重な仲間

—幼少期はみなさんそれぞれに「自分が一人で頑張らなきゃ」という思いを持たれていましたよね。でも、タイ・ワークキャンプでは、みなさんチームワークを重視していた印象を受けたのですが、どのような意識の変化がありましたか?

宮林:集団のなかで今までのような責任感を一切感じなかったのはタイ・ワークキャンプが初めてでした。一人で頑張らなくていいんだ、リラックスしてここにいていいんだと思えたのは私のなかではすごく大きくて貴重な経験でしたし、貴重な仲間と出会えたなと思っています。

オリジナルTシャツと民族衣装でお揃いコーデ

松本:私も高校時代までは自分で行動を起こしていかなきゃという気持ちがありつつ、同時にどこかで苦しさも感じていて。でも、タイ・ワークキャンプを通して、チームであると意識したうえで一人ひとりが積極的に動くことの大切さ、みんなで一つのことを作り上げる豊かさを初めて知りました。物が豊かとは言えない地域に行きましたが、人とのつながりを感じることで、目には見えない豊かさを得られるんだなと気付きました。

宮林ボランティアに行く前は、現地に住んでいる方たちって貧しくて苦しくてかわいそうなんだろうなと思っていたんです。恵まれた環境にいる私たちが助けてあげないといけないといった、上から目線的な気持ちが少なからずありました。でも、施設の代表の方が「彼らは貧しいけど、かわいそうじゃない」とおっしゃっていたのがすごく印象に残っています。その言葉が最初はどういう意味かわからなかったんですよね。もちろん日本とは違ってお湯のシャワーは出ないし、トイレも水洗じゃない。親と一緒に暮らせない子どもたちも多かったんですけど、子どもたちからネガティブな感情を感じなかったんです。みんな笑って過ごしていて、私が持っていた「かわいそう」という考え方は変えなきゃいけないと気付いたのがすごく大きかったです。

稲見:あと、現地はすごく楽観的な人が多かったよね。みんないつも「マイペンライ(なんとかなるさ)」と言っていて。そんな現地の方たちと過ごして、周囲から求められることを全部やらなきゃと自分を追い詰めてしまうほど完璧主義だった私も、楽観的になれたのが大きな変化でした。 

ボランティアや大学生活によって、身についた自信。上から目線ではなく、人に寄り添い、支えていく人になりたい

稲見:タイ・ワークキャンプのあと、私が主体となって悠莉ちゃんやほかの学生たちとタイに自主渡航したんです。大学祭(VERA祭)でもタイでの活動を紹介しながら、チャリティで現地の人が作ったポーチを売ったりして。人前に出ることが苦手だったんですけど、その時実行委員だった朋子ちゃんがステージ企画をやるということになって……。

松本:メインステージの司会者を募らないといけなくて、せっかくだったらタイでつながった人にやってもらえたらなと無理やりあかりん(稲見さん)と悠莉を誘ったんです(笑)。 
稲見:それで悠莉ちゃんと司会をやりました。人前に出るのは本当に苦手だったんですけど、大学生活で自分に自信をつけることができました。それもあって、私、公務員試験を受けたんですよ。大学受験を失敗したので、もう一度勉強と面接を頑張りたいと思って。今日発表があって、合格しました。ずっと自尊心が低かったですが、大学生活でちゃんと自信をつけて、自分なりのリベンジができたと思います。

松本・宮林:おめでとう〜!

—よい日ですね。おめでとうございます。

宮林:私、あかりんが自尊心低いってわからなかった。人にあんまり言わないよね。

稲見:そうかもしれないね。自主渡航した時も、タイとのやりとりや渡航の段取りを全部私がやっていたんですけど、その時はまだ周りに頼れなくてしんどかったんです。そんな自分を変えなきゃいけないと思って、大学祭でのチャリティ活動では仕事をみんなに分配することができて、うまくやれるようになりました。タイでの経験すべてを通して、みんながそれぞれに積極的なんだということを理解できたし、遠慮しなくていいんだと思うようになりました。

松本:悠莉も最初は姉御肌な感じだったよね。でも、タイで協力して活動していくなかで甘えてくれるようになって。心を開いてくれたんだなと感じてすごく嬉しかったです。

宮林:うん、みんな一皮むけた感じがあったよね。今朋子が言ってくれたように、あまり人に甘えることができなかったけど、タイ・ワークキャンプを通して人に頼っていいんだなと思えるようになりました。

松本:でも、それぞれ一生懸命やろうと考えている人たちだったから、頼り合いながらも受動的にはならなかったよね。集団のなかで起こした自分の行動が、周りを巻き込んでよい結果につながるという経験を、タイ・ワークキャンプを通してたくさんできました。

—東京女子大学で4年間を過ごしたからこそ感じたことはありますか?

松本:タイ・ワークキャンプや東京女子大学での学生生活を通して、人とのよいつながりを広げていけると思える価値観を学ばせてもらったと思います。その人にはその人にしかできない役割があって、一人ひとりができることをやって一緒になにかを作り上げるということを実体験できたし、それはSS精神にもつながる体験だったと思います。

宮林:高校まではずっと共学で過ごしてきたので、あらためて女性であるということに向き合えたのが大きかったです。「自分が女子だから」という考え方はあまりしてこなかったですが、女性ならではの苦労や悩みを友だちと話し合うことも多かったので、「女性としてどう生きていこう?」という視点で今後の人生について考えるようになりました。

稲見:この4年間を通していちばん感じたのは、やっぱり積極的な人が多いということ。でも、みんな方向性は違うんですよね。それぞれがいろんなことに挑戦する姿を見て、私も挑戦したいと思えましたし、自分も人を触発できる人間になりたいという気持ちも生まれました。高め合い、尊敬し合える、人とのよい関係性を築ける大学だと感じています。

—3人とも4年生ですが、卒業後はどんなことをしていきたいですか?

稲見:私はタイでのボランティア活動がきっかけで、関わりのなかで人を支えていきたいという思いが強くなったので、公務員のなかでも人との距離が近い区役所や市役所の職員を目指し始めました。さまざまな人のバックグラウンドを考えながら、人を支えていく職員になりたいと思っています。

宮林:私も人に寄り添って支えていけるような仕事をしたいという思いから、コンサルティング業界に進みます。上から目線でアドバイスするのではなく、自分ごととして一緒に頑張りながらお客様の会社を良くしていけるコンサルタントになりたいです。いずれは家庭も築きたいですが、若いうちは仕事を頑張りたいと考えています。

松本:タイ・ワークキャンプを通してみんなで協力することにやりがいを感じたことと、海外への視野が広まったことを踏まえて、日本と海外の日常を支える海運関係の会社で働くことになりました。大学で周りの人たちからたくさん刺激を受けたことで、周囲のことに気付いたり、それに対して自分から動いていったりすることを学んだので、今後もそういう積極性を忘れない女性でありたいです。
松本朋子
人文学科 歴史文化専攻4年次(取材時)

福島県出身。日本中世史や宗教と人々の関りに関心を持ち、日本中世史を学ぶ高田 陽介ゼミに所属し、副専攻としてキリスト教学を履修。大学祭である「VERA祭」実行委員を務め、企画部に所属し、3年間主要企画を担当。

宮林悠莉
国際社会学科 国際関係専攻4年次(取材時)

長野県出身。尾尻希和ゼミで発展途上国の政治学を学び、卒業論文ではタイの民主化をテーマにした研究を行う予定。英語サークルに所属し、スピーチの作成、大会運営などを行うほか、複数大学から学生が集い、国際問題に関する共同論文の執筆を行う学術団体十大学合同セミナーにも所属。

稲見朱莉
国際社会学科 国際関係専攻4年次(取材時)

群馬県出身。文化人類学を学ぶ関谷雄一ゼミに所属し、タイと日本を中心とした人身取引などについて学ぶ。

スタッフ

Interviewer・Writer:
飯嶋藍子
Photo:
吉田周平
Editor:
野村由芽