土合文夫(東京女子大学教授)「丸山眞男と文人たちとの交流」
『丸山眞男集』や『丸山眞男座談』の目次、あるいは『丸山眞男書簡集』に収められた書簡の宛名人を眺めて気付かされることの一つは、丸山眞男が多くの文学者たちと深い交流を持っていたという事実である。丸山が政治学者であるとともに、人文の領域に接すると言ってもよい「政治思想史家」であったことを考え合わせても、丸山の文人たちとの長期にわたる親密な関係には通例の「政治学者」からは想像しにくいものがあると言ってよかろう。
筆者は政治学にも政治思想史に対しても門外漢であり、丸山の仕事の本体を論評する資格や能力を持つ者ではないが、丸山と文学者たちとの交流を見ることによって、少なくとも、丸山の学問が生み出された人間関係の風土の一端を窺えるのではないかという思いがあった。また、機会を得て丸山の残した膨大な楽譜群の調査を一年半余り担当したなかで、丸山の音楽に寄せる尋常ではないほどの強い思いの基底にあるものは何なのか、という大きな問いが残り、この二つがどこかで通底するのではないかと考えて今回の報告に至った。
筆者は政治学にも政治思想史に対しても門外漢であり、丸山の仕事の本体を論評する資格や能力を持つ者ではないが、丸山と文学者たちとの交流を見ることによって、少なくとも、丸山の学問が生み出された人間関係の風土の一端を窺えるのではないかという思いがあった。また、機会を得て丸山の残した膨大な楽譜群の調査を一年半余り担当したなかで、丸山の音楽に寄せる尋常ではないほどの強い思いの基底にあるものは何なのか、という大きな問いが残り、この二つがどこかで通底するのではないかと考えて今回の報告に至った。