土合文夫 (東京女子大学教授)「丸山眞男の楽譜蔵書をめぐって」
丸山が遺した楽譜類のうち、丸山文庫が所蔵する600点あまりについては、調査結果を『丸山眞男記念比較思想研究センター』第7号掲載の「丸山文庫楽譜蔵書の調査をひとまず終えて」で報告した。書き込みなどの具体的なデータは、いずれネット上で公開されることになるだろう。
ただし、これ以外にも、ピアノの演奏譜を中心にかなりの点数の楽譜が丸山家に残されていることが分かったので、数度にわたっておおまかな調査を行った。時間的な制約もあり、不完全な調査に留まらざるを得なかったが、丸山の遺した文章(ことに、歿後にまとめられた断章集『春曙帖』に所収のもの)からして、当然あるべきだが、丸山文庫には収蔵されていない楽譜類(バッハの『平均律クラヴィーア曲集』、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトのピアノ・ソナタなど)の所在を確認できたことは収穫だった。
だが、丸山の音楽生活の全貌を窺うためには、楽譜の調査だけでは全く不十分であり、丸山家に残されていた膨大なレコードやCD・LD などのコレクション、それにFM 放送を録音したテープ、さらには、演奏会のパンフレット類などの調査が不可欠である。幸い篤志の方々によるこれらの資料の整理が継続中なので、その目途がつき、データを御提供いただければ、丸山の音楽とのかかわりについて、より完全に近い基礎資料が得られることになるだろうと期待している。
ただし、これ以外にも、ピアノの演奏譜を中心にかなりの点数の楽譜が丸山家に残されていることが分かったので、数度にわたっておおまかな調査を行った。時間的な制約もあり、不完全な調査に留まらざるを得なかったが、丸山の遺した文章(ことに、歿後にまとめられた断章集『春曙帖』に所収のもの)からして、当然あるべきだが、丸山文庫には収蔵されていない楽譜類(バッハの『平均律クラヴィーア曲集』、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトのピアノ・ソナタなど)の所在を確認できたことは収穫だった。
だが、丸山の音楽生活の全貌を窺うためには、楽譜の調査だけでは全く不十分であり、丸山家に残されていた膨大なレコードやCD・LD などのコレクション、それにFM 放送を録音したテープ、さらには、演奏会のパンフレット類などの調査が不可欠である。幸い篤志の方々によるこれらの資料の整理が継続中なので、その目途がつき、データを御提供いただければ、丸山の音楽とのかかわりについて、より完全に近い基礎資料が得られることになるだろうと期待している。
清水靖久 (九州大学教授・招聘講師)「丸山眞男と米国」
本報告の課題は、丸山眞男の米国観の分析を通じて、丸山の思想に新たな光をあて、その推移を明らかにすることである。丸山に対する米国の影響が無視しえないことは、これまでもしばしば指摘されている。報告者は、この点に加えて、米国に関する丸山の発言や態度は、日本における丸山の位置や自己認識、そして「日本観」を映し出す鏡としても把握できるという立場から、さまざまな時点における丸山の米国観と、その時期に日本国内で丸山が置かれていた状況とを突きあわせるというアプローチを採用することによって、上述の課題に取り組んでいる。こうした方法自体に、本報告の大きな特色が見いだされる。
第Ⅰ章「米国ビザ問題」、第Ⅲ章「海外亡命」および第Ⅳ章「その後」前半部分では、実現しなかったものも含めて、数度の米国行に関する米国や丸山眞男文庫などでの調査の結果判明した事実が、丸山の米国観を規定した要因として提示される。その間に挟まれた第Ⅱ章「米国の不可解さ」と、第Ⅳ章の後半部分では、既刊のテキストから米国に関する丸山の発言や米国での体験談が抜き出され、丸山の米国観の特徴と変遷がまとめられている。
さまざまな一次史料から丸山の行動の軌跡を解明することによって、丸山の思想理解に新しい局面を切りひらこうとする報告者の試みは、丸山研究の進展にとって、一つの重要な方向を指し示している。本報告に接した者(山辺)としては、以上のようにして明らかにされた丸山の行動やそれへの意味付与と、丸山の思想とを橋渡しし、丸山が書きのこしたテキストの内容理解に生かしていくことが、今後必要になるのではないかと感じた。
文責・山辺春彦(東京女子大学特任研究員)
第Ⅰ章「米国ビザ問題」、第Ⅲ章「海外亡命」および第Ⅳ章「その後」前半部分では、実現しなかったものも含めて、数度の米国行に関する米国や丸山眞男文庫などでの調査の結果判明した事実が、丸山の米国観を規定した要因として提示される。その間に挟まれた第Ⅱ章「米国の不可解さ」と、第Ⅳ章の後半部分では、既刊のテキストから米国に関する丸山の発言や米国での体験談が抜き出され、丸山の米国観の特徴と変遷がまとめられている。
さまざまな一次史料から丸山の行動の軌跡を解明することによって、丸山の思想理解に新しい局面を切りひらこうとする報告者の試みは、丸山研究の進展にとって、一つの重要な方向を指し示している。本報告に接した者(山辺)としては、以上のようにして明らかにされた丸山の行動やそれへの意味付与と、丸山の思想とを橋渡しし、丸山が書きのこしたテキストの内容理解に生かしていくことが、今後必要になるのではないかと感じた。
文責・山辺春彦(東京女子大学特任研究員)